サイト内検索
AND OR
Photo Essay
Text Essay
Desktop Gallery
Guestbook
Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

ナイトラン

深夜にバイクに火を入れる。

エアクリーナーを改造した結果、チョークを引かないと始動できなくなっていた。

昼間ならセル一発でかかるエンジンも、何度かのクランキングでどうにか目覚めようとするだけ。
バスバスと不機嫌な咳き込みをみせてグズリ、そして爆発音と共にやっとの事で始動した。

圧縮比が上がったピストンらしく、排圧も派手な排気音が爆竹のように木霊する。
そして大好きな吸気音も負けじとその存在を主張した。


実は、覚悟を決めねばならぬ事があった。
それは、「背負う」という覚悟だ。

最初からそんな覚悟はできているのだが、
私自身が、どっかで「出たトコ勝負」の楽天的な考え方に甘えていた事を知っている。

だが状況は過酷で、そのような甘えを許す猶予は無かった。


「それが役割だ・・・」と己に向かって呟く。

そしてその覚悟を身体でも確認したいがために、
深夜にわざわざバイクに乗ろう・・と思ったのだ。

楽しむためではなく、ダレてきている五感をリフレッシュするため。
そして、その全てを敏感にし、無になって考えたい・・・ためだ。


答えなんて、実はわかっている。
感情を無視すれば、答えは機械的に結果を出すだけだ。

だが、感情はそれを拒む事が多い。
そしてその感情は、やっぱり己の生き方に全て返ってくるモノだ。

だから、感情と信念を並べて考えたかった。


「騙される奴が間抜けなのさ・・・」と言う奴がいたが、
「騙されても誰かがその結果、楽になれるのなら良い・・・」と思っている。
そして私自身が誰かを騙す事なく生きていれば、私はいつも幸せだ・・と思える。

利用される事は嫌いだ。
利用される事は悲しい。

だから利用されても気がつきたくないし、
それが解っていても自分で納得できる形であればいい。

しかし利用する側の中には、利用される人間の気持ちなんて考えもしない奴がいるのも事実だ。

そしてそれを想像する時点で、私は感情の支配に負けそうになってしまう。


第2京浜をいつもより遅い80マイル程度で流す。

風は冷たく、熱くなりがちな頭を冷やしてくれるが、
ミニカウルのお陰で身体はちっとも寒くない。

背中を見て追ってくるバイクも少数いたが、見物に来るだけで絡んではこなかった。


併走して走る車の間をかなりの速度差で抜いてゆく。

見切りを間違えたり、コチラのラインがブレれば即、アクシデントになる行為だと知っていても、
そうやって走っていくのはいつもの事だ。

その瞬間、行けるコースは一本だけとなり、それが見えれば後は行くか行かないか・・・の決断だけ。
そして私は、そこを行くのが私の走り方だ・・と知っている。


行くか・・・?
行かないか・・・・?

行くのがお前の生き方なんだろ?

何を悩んで、何を考えて、ただただ時間を浪費する「躊躇」をしているんだ?


そう、
この感覚を思い出したかったんだ。

そう、
自分はこうやって生きてきたんだ。


どうやらバイクという乗り物は、私にとっては自分の心を映す鏡でもあるらしい。

気がつけば、大げさに考えていた意識は消え、自然体に戻っている自分がソコにいた。

 
 
サイト内の画像・テキスト等の無断利用・転載は禁じます。
Hisashi Wakao, a member of KENTAUROS all rights reserved. / Web design Shigeyuki Nakama
某若夢話は横浜飛天双○能を応援しています。