「今どちらですか?」
「ちょうど掛川を越えたあたりだな」
「それでは東郷PAでお待ちしています」
出迎えの仲間から電話が入る。
100マイルで巡航しているのに、PHSにかかってくるなんて・・・とちょっと驚いた。
そう、今日は「ひつまぶし」を食べにいくドライブの日。
元々は友人の新車のナラシ運転をするためのイベントだったが、急遽の仕事で彼は参加できなくなった。
しかし告知をしてしまった関係で、名古屋地区で待ち受けてくれる仲間も居るし、
最近気合いを入れてないから回したい・・というTypeR乗りも居る。
で、私は・・と言えば、頭の中に「ひつまぶし」がぐるぐると飛び回っているわけで・・・
「悩んだ時は王道」
そう決めているから、登録商標として「ひつまぶし」を出願している店に出かける事にした。
(コレを基準とすれば、次に地元民オススメの店へ行ってもまた、別の意味で楽しめる)
「あつた 蓬莱軒 本店 (蓬莱陣屋)」
052-671-8686
愛知県名古屋市熱田区神戸町503
11:30〜14:00
16:30〜20:30(L.O.)
休 月曜日
アテンドしてくれた仲間に連れられてこの店にたどり着いたのは16時だったが、
既に並んでいる人間が数人居る。
さすがは元祖、美味しいとの評判の裏打ちがされるようで、待つ事もまた楽しいのだが、
思いっ切り高そうな店構えが、これから繰り広げられる鰻バトルに少しだけ不安をかき立てる。
余程の物を食べない限り1人1万円なんていくわけは無いのだが、
店構えはそんなイメージをプンプンさせているのだ。
「お待たせしました〜」
と仲居さんが門を開けると同時に、並んでいた人達がダ〜っと入り口に向かっていく。
並んでいるのだから、順にゆっくり行けばいいのに・・・・と思いながらついていくと、
入り口で「お名前と人数をお教えください」と叫ぶ仕切やオバサンがいた。
もうちょっと優雅に入ろう・・・なんて猶予を与えてくれない緊張感があるが、
殆ど最初に入っている余裕をもって、こっちはゆっくり対応・・できなかった(爆)
通されたのは4人掛けの座卓×4、2人掛け座卓×2が収まる和室。
ライトアップされた中庭が見える風情のある部屋だったが、その部屋はあっという間に満卓となる。
奥にはテーブル席がある部屋、手前には座卓をセットした部屋、隣にも和室があり二階もあるようだが、
公式には40人分の席しかない・・・と記されている。
「最初に冷酒を・・・ と、冷酒は何がありますか?」
「万菊でございます。 それしかございません」
「ではそれを2つと・・・・
活車海老のサラダ(2000円)
鰻ざく(800円)×2
ひつまぶし(2300円)×3
をオーダーする。
「お酒が出ますので、お食事はお声掛けください」
と順当な対応を受け、まずは仲間と再会を祝して乾杯した。
生貯蔵酒と書かれた「万菊」は、アル添香はあるもののすっきりとした味わい。
愛知では一番新しい蔵元と言われているが、「ドラゴンズ」という酒も作っている
地元ベタベタの蔵でもあるらしい。
4時半に座敷に入って、まだそんなに腹が空いているわけではないから、
こっちは酒をゆっくり楽しむペースでいるのだが、回りの客達の勢いは半端じゃない。
どんどん「ひつまぶし」が運ばれ、ワイワイと騒ぎながらパクついている。
折角の夜の宴なのだから、ゆっくり食べれば良いのになぁ〜と中庭に目をやれば、
和服の女将に連れられた芸妓が横切った。
ここはそういう店なんだな・・・・と感心しきり。
対照的な一般客との距離はもの凄いモノがあるな・・・と苦笑しながら杯を煽った。
活車海老と書かれた海老はマキに近い位のサイズだったが、頭が美味しいところを見ると確かに新鮮そのもの。
たっぷりとしたグリーンサラダにボイルされた海老が散らされた豪華な物だった。
そして「鰻ざく」は、焼いて細く切り分けた鰻と酢の物を合わせた料理なのだが、
関西風に焼いた味の濃い鰻に、胡瓜の酢の物が良いバランスをみせていた。
で、酒が進んでしまう・・・・(^_^;)
そして・・・気がつけば廻りに客の姿なし。
我々だけがゆっくりと酒を飲み、語り、本来の優雅な時間を取り戻していた。
そんなに混んでないじゃん・・・とトイレに立ってみればとんでもない。
店の外にまで連なる行列ができ、この店の人気を彷彿とさせている。
一番で入店できた客のために鰻は予め焼かれていたのだろう。
でなければ、あんなに早く「ひつまぶし」が出てくるワケはないのだ。
だから、今待たされている連中は第2陣で、客間に入っても待たされるだけなのだろうから、
店側も無理して店内に詰め込まない・・と見た。
我々は、そのペースを乱す困った客だったのかもしれないが・・・(^_^;)
そんなこんなで、待ちに待った「ひつまぶし」がやってきた。
碁石を入れる入れ物を少しだけ大きくしたような器に擦り切りいっぱいの飯が入り、
その上には飯が見えない程の量の細切りの鰻がのっている。
薬味はアサツキ・山葵・刻み海苔で、他に香の物と吸い物、茶漬け用の出汁が揃う。
聞いていた通りにお櫃に十字の切れ込みを入れ、まずはそのまま食べてみた。
(一杯目はそのまま、二杯目は薬味、三杯目は鰻茶、四杯目に好きな食べ方・・と)
美味い・・・
少し味がクドイ・・・
脂はそんなにつよくないが、しっかりとのっている感じがする・・・
そして何より、歯ごたえが良く、備長炭で炙られた独特の風味が食欲をそそる。
ペロッと一膳目を平らげるとすぐ、次の膳にとりかかる。
(今度は、薬味をのせて食べるワケだ)
味の濃さと、薬味のバランスが取れている。
前にも思ったが、葱と鰻は相性が良いのかも知れない・・・・
そして海苔も・・・
ここまで無言で食べてしまった。
想像以上の味ではなかったが、このドッシリとした食べ応えのある鰻丼はやっぱり好きだ。
が、大事なのはこれからだ。
そう、いよいよ鰻茶を食べるのだ。
お茶碗に3杯目をよそい、薬味をのせ、出汁をドバドバ・・とかける。
(ここの茶漬けはお茶ではなく出汁をかけて食べる)
やっぱりね・・・
この味の強さは、この茶漬けのためにあったのね(^_^)
と言っていい位、ぴったりとバランスされた鰻茶がそこにあった。
ズルズル〜といただくと、鰻の脂とタレの味と薬味の爽やかさにいくらでも入ってしまう。
最初から全部この食べ方にさせろ・・・とも思ったが、
もともとタレでふやけ加減の飯を長い間出汁に付けておけば、最後の方は不味くなってしまうだろう。
だから結局、この食べ方で正解なのかも知れない。
アテンドしてくれた仲間が「元々これは賄い食です」と教えてくれたが、
その賄い食を上手く食べさせる方法論でまとめたのは大したモノ。
勿論最後の一杯も鰻茶で食べたのは言うまでもない。
浅草にある
「うな鐵」
03-3841-1360
台東区浅草1-43-7
には、「浅草ひつまぶし」(これも登録商標だ(^_^;))というモノがあるらしいが、
そこでは最初に「紫蘇と海苔」次に「葱と山葵」そして最後はやっぱり「鰻茶」で・・と勧めている。
(一人桶1500円・二人桶2800円・三人桶45200円)
「鰻茶漬け」がこんなに美味い・・となると、邪道と知っても近場で試してみたくなるが、
きっと横浜の鰻屋じゃぁ作ってくれないだろうなぁ・・・・(;_;)
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