ちょっとしたパーティーがあって、久々にバイクで本牧に出かけた。
新山下の直線の先は、昔悪名高かった右シケイン。
今は緩やかなS字コーナーに改修され気持ちよく突入できるが、
小港住宅前の路上にはよく非常識な路中がいるので、要注意だ。
市営バスやタクシーをパイロンにしてスラロームを切りそのコーナーに120km/hで突っ込むと、
やっぱりトレーラーが一車線潰して停まっていた。
やっぱりな・・・と思いながら、もう一回スラローム。
そして小港の交差点を左に曲がれば、目指す店はもうすぐだ。
右直角コーナーを立ち上がると、懐かしいネオンが見えた。
USS・インターナショナルセンターシーメンスクラブ
045-623-2237
神奈川県横浜市中区本牧埠頭3
11:00〜21:00(飲物は〜22:30、日曜は11:30〜21:30)
無休
以前にも紹介した事があるが、随分と訪れていなかった。
案内役で待機しているメンバー達と挨拶を交わし、中に入ってみる・・・。
随分と上品になってしまった。
そう感じる位綺麗に改装されていたが、ジャンクショップもビリヤードもカウンターバーも相変わらず。
そして外国人船員がクダを巻いてるのも相変わらずの風景だ。
ミニッツステーキ ---- 1600円
シュリンプカクテル ---- 800円
ハンバーグステーキ ---- 1100円
クラブハウスサンド ---- 750円
といった極普通のプライスが付いているが、そのボリュームは相変わらず。
あまり金を使えない船員のために・・・という事もあってか、コストパフォーマンスは抜群。
(船員は、ビリヤード&テニスは無料らしい)
今日のパーティーメニューはステーキディナーだ。
ワイン飲み放題・オードブル・スープ・サラダ・ステーキ・ライスorパン
といったコースだが、ステーキ以外はバイキング。
で、ついつい取りすぎてしまうのだが、そのスープを飲んで子供の頃の風景が突然蘇った。
そう、米軍関係者の家で飲ませてもらった、独特の味と香り。
(たぶん、ハインツかなんかの業務用スープだと思うが)
それが、この店では、当たり前に供されているのだった。
「Hey! BOY!! COME ON!!」
やべぇ・・・見つかった・・
「逃げろ!」
パーン!
後方で銃の発射音。
また、撃ってきた・・・・。
それは昭和30年代の話。
私が住んでいた地区は、「エリア」と呼ばれる米軍住宅地と隣接していた場所。
道を隔てた向こう側には紛れもなくアメリカがあり、フェンスは無くても「入るな」という看板があった。
独特のスタイルの文字で、罰せられると書いてある。
それが威圧的であり、支配する側とされる側との象徴にも見えた。
そしてまた、その境となる道に存在したのが「YC&AC*」で、ここがまたホワイトオンリーの日本じゃない場所だったからたまらない。
(Yokohama Country&Athletic Club:当時は外国人専用のアスレチッククラブ
現在は、クラブ員の紹介があって英語によるインタビューを受けたごく少数の日本人も所属している)
生け垣の脇から覗けば、緑の芝生で子供達がアメリカンフットボールをしていたりする風景が広がるが、
自分より小さな白人の子供達に見つかれば、寄ってきて攻撃を受けるのは当たり前。
隣の家の話し声が聞こえる程建て込んだ住宅に住んでいる私にとって、
その広さと眩しさ、揃いのユニフォームが持つ贅沢さや、白人しかいない世界は、
どこかしら白人に対する反抗心を育てるだけの魅力を持っていた。
塵一つ見えない舗装路が続き、歩道から家までの間には豊かな芝生。
家と家の間は広く取られ、優雅で豪華に見える米軍住宅。
そこを友達と探検に入る。
それは、子供ながらに感じた差別に対する、精一杯の抗議でもあった。
しかしそんな探検も、すぐ逃走を余儀なくされる。
何故ならMP(ミリタリーポリス)が必ず巡回してきて、私達をオモチャにするのだ。
彼等は、日本人の汚いガキを追い出せばよい。
しかしそれは、単純に退屈な仕事。
だから・・・・
彼等は銃に空包(と言っても、岩塩の弾頭が付いている)を詰め、私達を的にして撃つのだ。
勿論、威嚇が目的だから、胴体に当てる事はない。
しかし、その凄い大きな音と、目の前で飛び散る着弾の白い煙(に見えただけの岩塩)は
子供の恐怖心を煽るのに十分な効力を持っていた。
そして、足元に撃っても逃げない(びびって逃げ遅れた・・とも言う)子供には、
実際に足や手に空砲を撃ち込まれる・・・という脅しも加えられる。
「COME ON!」という言い方が脅しの言葉にもなる・・という事をその時知った。
良い時代になった・・・・
アメリカ人船員の為に作った施設を借り切ったパーティーに出て、そう思う。
恐くて格好良くて恨みと憧れが交錯する国「アメリカ」は、今は感覚的に遠い国だ。
「日本」という国に生き、色々な国を見るにつけ、「日本」の存在意義を感じるが、
今「アメリカ」を見ると、好戦的で自分勝手で、ある意味貧しい国に見える。
この「USS」の古ぼけた店内が、正に今の「アメリカ」そのものに見えたりするのだ。
不況に喘ぎ明日も見えない日々が続いても、夜中に爆弾が落とされ明るい時に狙撃される事もない。
明日食べる食べ物自体が底をついているわけでもない。
その平和の意味を感じないで、毎日、感情にのみに振り回されているのが、今の「日本」だ。
その事に気づけただけでも、この店に来た意味があったらしい。
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