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NTTのタウンページのコマーシャルを見ていた。
老舗の料理店を舞台にした広告掲載のCMだったが、何だかコマーシャルに見えない。
でも、所詮は15秒間の映像だから、その違和感もすぐに消え去ってしまった。
何となく気になる・・・と思っているとまた、そのCMが流れる。
あれ？
どこかで見た事が・・・・
有るはずだ。
我が家のすぐ近くの店じゃないか・・・・
裏手の昔ながらの玄関を高級料亭のように上手く撮影された店は、
よく食べに行く庶民的な鰻屋だった。
いつも見慣れた風景をCMで見ると、ホームビデオを見るような気分にさせられるらしい。
だから、コマーシャルとしては違和感を覚えたのだろう。
横浜はかなりの確率でCMやドラマに使われるため、現実に引き戻される事は多くある。
しかし、我が家の回りはそんなお洒落な風景は存在しない。
だから凄く不思議な感じがしたのだろう・・・・
そのCMが流れたのはもう随分昔の話なのだが、その店に行く時必ず思い出す。
「菊家」（鰻）
045-322-4141
横浜市神奈川区反町1-7-4
昼〜20：00
日曜休
そう、ここは以前にも少しだけ紹介したごく普通の鰻屋である。
店は、４人掛けのテーブルが３つ、６人掛けが一つ、そして小上がりに座卓が３つ・・といったサイズだが、
裏にはちゃんとした座敷があって４人以上でコースを頼むと使えるらしい。（6000円から）
で、こっちはだいたい一人で行くからそんな部屋には入れないのだが、元より豪勢な料理は期待してない。
鰻重とお酒で十分・・と割り切った付き合いしか、していないのだ。
で、疲れているからか何となく身体が求めるから、久々に行ってみた。
もずく 800円
鰻重（肝吸い付） 1600円
と普通？の値段だが、味からすると少し高め。
ビールを一本もらって飲みながら、お重が上がるまでゆっくりと待つ。
この前食べた「お櫃まぶし」も良かったが、お重も捨てがたい。
脂が乗った鰻とタレが適度に浸みたご飯はもう・・・・。
そしてこの「菊家」は関東風の味付け故、ビールがまた進むのだ(塩がキツイって事なのだが）
「河豚が美味しく食べられる時期って知ってます？」
「やっぱり冬でしょ？」
「常識的にはそうなんですけど、実は違うんですよ」
「？」
「秋と春先がいい」
「え〜？」
「いや、この手の店で食べる場合、仕入れ価格ってのは決まってるでしょ？
だから同じ仕入れ価格で入れると、オンシーズン中は良いのが回ってこないのね・・
で、同じ値段で良い物が入るとすれば・・・・」
「ふぐちりなんて食べようと思わない時期？」
「その通り。
だから、季節で売れてしまう魚は、そういう傾向があるんですよ」
と語ってくれたのは、山田屋の板長。
・・・となれば、土用の丑の日に鰻を食べるなんて「愚の骨頂」になる。
じゃぁ今は？？
寒くなる時期、魚は脂肪を貯め込む傾向があるから、鰻も脂がのっているはず。
そして人気が落ちているから・・・・
今日オーダーしたのは一番安い鰻重だが、期待できるかも知れない。
出てきた鰻重を見ると、心なしか鰻が太っている。
どれどれ・・と食べてみると、美味い・・・ぞ
かなり・・・・・美味い(^_^)
蒸して脂を落とす焼き方なのに、しっかり脂が乗って柔らかい。
シーズンオフの鰻って、本当にアリかも知れない。
日本料理を楽しむ場合、旬を知れ・・とよく言われたが、
最近は「味の旬」と「価格の旬」を同時に考えないといけないらしい。
もっとも、野菜も魚も、旬なんてあまり関係なくなってきた今、
存在しても高すぎる天然物の旬を追い求めるなんて、庶民には考えられない。
ならば、人気によって左右される仕入れ価格を考えた方が利口、というものだが、
季節感はどんどん損なわれていくしかない・・・わけだ。
そしてますます、本来の旬の味を忘れていく・・・・・と。
自然に翻弄される乗り物に好んで乗る私としては、いささか心苦しい事ではある。
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