日曜の夜にしては騒がしいロイヤル・アスコット。
9時半なのにカウンターには私一人。
でも、奥のテーブル席が異様にうるさい・・・。
バーテンダーに聞いてみれば、結婚式の2次会だとか。
(そりゃ、盛り上がるわけだね)
ホテルのメインバーだぜ?
とも思うが、今日は多目に見てやろう・・なんて偉そうにしないで、
とっとと酔ってしまう事にした。(酔えば耳も遠くなる(^_^;))
今日は、友達と「松茸ご飯」を食べてきたから、当然の如く日本酒が結構入っている。
で、最初からグランレゼルバをストレートで飲む事にした。
何度飲んでもバランスの良さは際だっている・・と感じる。
日本酒の後なのに、甘さと苦さが舌の上で転がった。
騒いでいる彼等を煙にまくわけじゃないが、久々に太巻きを楽しもうと思いつく。
そう言えば、ゆっくり長いのを吸う機会が最近無かった・・と、思ったからだ。
ヒュミドールの中を覗けば、AVOのインテルメッツォ(140mm x 20.0Φ)があるじゃないか。
ロブストの太さで長めのコレは、チャーチルまではいかないもののかなりのロングスモークが楽しめる。
(普通でも1時間半、ゆっくり上手に吸えば2時間近くは保つ)
そして何より、食後のデザートのような美味しさ、甘さがあって、時間を味わうにも素晴らしい一本だ。
モルトもシガーも、どっかでクリームにもにた滑らかな感触と味があると感じる。
ケーキを食べた時の食感にも似た気持ちよさと、後味も・・・。
そんな感触を強く味あわせてくれるのがAVO(ダビドフの別ブランド)で、
スペイサイドモルトを楽しむ時にも、美味しく吸える・・・と思っている。
と、一際大きな歓声が上がった。
振り返るとソコには・・・・・
真っ白のスーツを着た男性と、ベールだけ外したウェディングドレスの女性が立っている。
「ねぇ、ああいうのアリ?」
「いや、私も・・・初めての経験です。」
「俺も初めて見たよ。
ホテルのメインバーにウェディングドレスのまま飲みに来る人って・・・」
仲の良いバーテンダーに尋ねてみたが、彼も首を捻っている。
珍しい・・と言うべきか、非常識・・というべきか・・・
「最近、不思議なお客様が多いですから・・・」
「へぇ・・どんな?」
「例えばですねぇ・・・ 一時期毎晩いらして、必ず日本のビールを10杯飲む外国人の方とか・・・」
「10杯? 一人で?」
「必ずお二人でいらっしゃるんですが、二人して10杯ずつ飲むんですよ・・・」
「こうやって7本も並べるバカとか居るしね?」
「とんでもございません、13本ってお客様もいらっしゃいます」
「上手く売ったね」
「そのお客様は数をお持ちになるのがお好きで、同じ銘柄を2・3本取られるので・・」
思い出した。
そう言えば、その人を見た事がある。
ジョニーウォーカーブラックとオールドパーを2本ずつ、カルバドスを3本・・・
といった感じでキープしている人の事だ。
昔、ジョニ黒やオールドパーが憧れの対象だった時代、
いつかきっとボトルキープしてやろう・・と固く心に誓った企業戦士なんじゃないか・・と、
彼を見た時感じたので覚えていた。
若い頃、高い酒も高価な食事もいつか味わう・・と心した事がある自分は、
今、レベルの程度はあるにしろかなりその夢が実現できていて、
それなりに幸せを感じている。
それは歳を取って経済的に余裕があるから・・という事ではなく、
食欲にまつわる願望が人一倍強くてエンゲル係数が高いからだ・・と思っている(^_^;)
子供の頃、松茸ご飯だ・・と言われて出された炊き込みご飯には、
糸のように細く薄く切った松茸が入っていたはずだが、とうとう見つけられなかった記憶がある。
だから今日もちゃんと松茸が入ってる「松茸ご飯」を見て、それだけで幸せになっていた。
最高級でなくても構わない。
でも、そこそこの贅沢は、生きていく糧に成り得ると、思っている。
裾を引きずりながら平気でトイレへ行く彼女の後ろ姿を見ていて、
自前でドレスを作る・・・という贅沢を一生に一度の日に味わうのが、
そのカップルにとっての目標だったのだろう・・・・と感じた。
最近、これだけはまだ知らない・・・という事が少なくなってきたように思う。
それが無くなると死んでしまうかも知れない・・・・
から、もっともっと新規開発をしなくちゃいけない・・・と心に誓いつつ、杯を傾けた。
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