風邪引いた。
と言うか、疲れがたまってオーバーヒートしたらしい。
発熱と腹痛のダブルパンチで午前中は休んだが、午後には大事な会議と夜には約束。
だから、無理を押して会社に出た。
目眩がする程度の熱だから、仕事はどうにかこなす事はできる。
しかし、辛そうな表情は、回りに対して良い影響を与えない。
(しょうがないじゃん・・と開き直るが)
これが、39度オーバーの発熱になるとこうはいかない。
私の場合平熱が低いから、尋常じゃない状態に陥るのだ。
どうなるか・・と言えば、
・考えが、傷のついたレコードのように同じ所で何度もループする。
・身体のコントロールが上手くできなくなる。
・味が解らなくなり、食欲が無くなる
といった感じ。
当たり前と言えば当たり前だが、そんな状態でも仕事しなくてはいけない事が何度かあって、
そこで学んだ事がいくつかある。
酒酔い運転の場合、身体の感覚が狂う事は無いがコントロールがいい加減になる。
発熱の場合は、そのコントロール自体が、頭と実際でずれるようになる。
つまり、発熱していると、ハンドルを切ってもハンドルが切れていない状態になるのだ。
その日、朝から熱が高くて物事が考えられなかったが、
取材のスケジュールがこの日しかなく、技術もレポーターも押さえてしまったため、
自分の健康状態だけで仕事を流す事ができなかった。
ロケ車に乗り、レポーターと最終打ち合わせをしながら現場に向かうが、
すでに呂律が回っていない私を見て、レポーターは外してはいけない項目だけを確認する体制を見せた。
「解ってるって、簡単な紹介でしょ?」と目で訴えるレポーターに感謝しつつ、
今度はカメラマンに「これだけは撮ってリスト」を渡し、「よろしく・・・」とだけ呟いた。
(自分がよく忘れるから・・・と、取材用のメモを作るクセがついていが、
それを前日に作っておいて助かったワケだ。)
結果的に仕事は事なきを得、後は帰って寝るまで・・という事になったが、
車に乗って驚いた。
とにかく車が曲がらない。
ブレーキを踏んでも止まらない。
泥酔でもここまでヒドクないぞ・・・と青くなる。
ただ、アクセルも踏めてないようなので、スピードも出ない。
だからどうにか家に辿り着く事はできたのだ。
しかし・・・・
車から降りる力が既に無かった。
気持ち悪さを耐えながら降りようと努力するのだが、身体は言うことを聞かない。
結局30分を費やして、車から降りる事に成功した。
こうなったらする事は限られている。
何か食って寝る・・・しかない。
どんなに食欲が無くても、食べないと身体は治りにくい。
その事は経験的に知っているから、どんなに調子悪くても食べる回路ができている。
しかし・・・冷蔵庫の中には、栄養ドリンクが2本以外ろくな物が無かった。
翌朝、出社時間前に気持ち悪さで目が覚める。
寝ていても目眩がしているが、今日、昨日の取材をまとめないと間に合わない。
一日しっかり寝たのによ〜と悪態をつくが、誰も代わりに仕事なんてしてくれないのは承知の事。
そうなると、間に合うギリギリの時間を逆算して、そこまで寝ていよう・・なんて計算が始まる。
毎週のレギュラーを持ったディレクターとしては、穴を空けたら即解雇。
そして、穴を空けない事だけが唯一のプライドみたいな物なのも、事実。
そんな意地みたいな物だけで頑張ってしまう自分としては、たかが熱ぐらいで・・・と思うのだ。
もう、一分も無駄にできない時刻になった。
これ以上は寝ないで働いても間に合わない・・と想像できる時刻。
と、不思議な事に熱がスッと下がる。
そして何事も無かったように身体は動き、会社に向かって走り出した。
これはもう10年以上前の事。
情報番組を担当していた頃の話だ。
人間は、自らの身体を意志の力でかなり左右できる。
休みが取れる・・と思った瞬間発熱し、今日から仕事だ・・という日にはシッカリ熱が下がる事は
当たり前に私の身体に何度も起きた事だった。
ボケ老人は風邪をひかない・・という話を医師から聞いて感じるのは、
どれだけ自分の心の状態から身体を痛めつけているのだろうか・・という心配。
発熱もハラ痛も、飲み過ぎの身体が出した信号か?
という事で、珍しく大人しく寝る事にした。
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