10月に入ると、そろそろ新米が出回る時期になる。
しかしその美味さを知ったのは、20才になろうか・・という頃の事で、
それまで家のご飯は美味しい物じゃない・・という概念しかなかった。
「随分高いんだけど、あんまりお店の人が薦めるのでつい買ってしまった・・・」
と言う母親の言葉にも、『大した違いなんてあるわけないだろ・・』と期待もしていなかった私は、
艶々と光る飯粒にまったく違う食べ物としての雰囲気を感じた。
一口、口に入れてさらに驚いた。
何?これ・・・??
今まで食べてたお米って、何だったの・・・(;_;)
と言う位、それはそれは美味しいお米だったのだ。
慌てて米の入っているビニール袋を見ると、
標準米の袋とは比べるべくもない豪華な印刷がされた袋が見える。
読んで見れば「100%ササニシキ」と書いてあるじゃないか・・・。
ササニシキやコシヒカリが美味しい米だ・・・という事は情報として聞いていたが、
それを食べる事は有り得ない・・と思っていた。
値段を見ればほぼ倍の値段。
だから、そんな高価な主食用食品を購入できる家計ではない・・・と信じていた。
「どうして、こんな高い米を買えたの?」
「お店で食べさせられたんだけど、美味しかったのよ」
「でも値段が・・・」
「どうにかなるわよ・・・。
しかし、こんなに味が違うとは思わなかったわ」
「どうにかなるなら、色々なところで言われていた時、試してみれば良かったじゃん」
「お米は『標準米』で良いのよ」
「でも、買ってきたじゃん」
「だって、お米屋さんが持ってきてくれなくなったから、
スーパーで買わなきゃいけないでしょ?」
「そうじゃなくて・・・、高い米を買ってきたって事だよ」
「お金は大丈夫なのよ・・・」
何〜ぃ??
倍の値段の米を買っても大丈夫だってぇ??
色々話を聞いてみると、いつも米屋にお任せで頼んでいたから、
米屋が勝手に一番安い米を持ってきていたらしい事が解った。
当時、スーパーストアによる米の安売りが広がり、割高感のある米屋は配達料を別にしてでも
米の値段を下げる方向にシフトしたのだろう・・と想像する。
つまり、配達する事で米が高いと言われる位なら、面倒な配達なんてやめてしまえ・・・もしくは
配達料は別途いただきます・・・という考え方を打ち出したのだろう。
美味しい物を追求する気なんてさらさら無かった母親にとっては、
確実に家まで米を持ってきてくれる事が大切であり意味がある事だったらしく、
その米屋の米だと虫が湧かないという事も大事だったらしい。
だから、高い米に出会うチャンスは、まったく無かったのだろう・・・・
(こっちは、コスト問題で高い米を買えないのだ・・と思い込んでいた)
とにかく、オカズなんていらないでご飯が食べられる。
それは、もの凄く衝撃的な事実でもあった。
以来、我が家では「標準米」を使う事は無くなった。
外食が続くと、たまに米だけでも満足できるような、美味しいご飯が食べたくなる。
しかし、自炊するには効率が悪すぎるし、毎日同じ物が食べたくない私にしてみれば、
残り物が捨てられずに苦しむなら・・・と自炊を止めてしまっている。
(パスタ位だったら良いんだけどね)
だから、美味しいご飯をだしてくれる店を探そうとするのだが、
それは有りそうで無い・・・という現実と、米より酒の感情によって忘れ去られる運命を持っていた。
「ONO PUPU」
045-641-0246
横浜市中区元町1-23-1
11:30〜15:00(LO 14:30)
18:00〜22:00(LO 21:00)
「契約農家直送の100%新潟コシヒカリを自家製米し、
その日のうちに美味しいおかず(ONO PUPU)と一緒に召し上がっていただきます。」
と宣伝文句を掲げる店が元町にあった。
「ラ・ストラーダ」の側にあるこの店はいつも客が入っている人気店で、
前を通る度に気にはなっていたが、どうにも飲む事の方が優先して素通りをしていたのだ。
そういやぁ、そろそろ新米の時期だ・・・と思いつけば、
やっぱりソレが宣伝文句だと解っていても、ちゃんとご飯物を食べたくなる。
で、行ってみた・・・
店は16人も入ればいっぱい・・といった感じの鰻の寝床に近い形をしているが、
BANG&OLUFSENのBeoSound9000から何故が低音がバシバシに効いたブラコン系の音楽流れている。
しかも話が出来ない位の音圧(低音)で、コンクリートの壁のお陰で響く事響く事・・・。
はっきり言って、ウルサイ。
飯をゆっくり食う気分にはなれないぞ・・・と
だから、店の一番外側に陣取った。(セミオープンカフェ状態なので、音が幾分静かに感じられる)
レインボーサラダ(1200円)
生春巻き(1200円)
穴子のグリエ(1700円)
アヒ・ロール(1700円)
生ビール(600円)
グラスワイン(500円)
・・・・
高い・・・・と思う。
米に金がかかっているのは理解できるとしても、サラダや生春巻きが1000円を超えるのはどうかと思う。
ロール・・とあるのは巻物で、これ以外にも鰻や梅と山芋・・なんてのもあるが1600円オーバーとなる。
しかし味は、かなりマトモな味・・と言うか、良質な素材を使っている・・と感じられる物だった。
(この値段で、良質な素材じゃなかったら、久々に殿堂入りだぞ・・と)
サラダや生春巻きは想像のつく美味しさで、値段と味のバランスは取れている・・と評価していい。
穴子のグリエは、一本の穴子とかやくご飯を合わせ、チーズをのせてグリエした物で、
今回食べた中では一番ご飯が美味しく感じられる逸品だった。
そしてアヒ・ロールは、カリフォルニア風鉄火巻きといった感じだが、
ご飯を全面に出している店としては、ご飯の味を引き立てていない・・と感じさせるレベルだった。
店のインテリアもサービスも中々良い。
味もまぁまぁだと思う。
飲物はワインを主体に考えているようで、
ワインとつまみ・・・といった食べ方にはピッタリだと思う。
(酔っぱらってしまえば、このウルサイ低音も気に障らなくなるだろう)
元町の裏側で、あまり人に知られていない店が、けっこうお洒落で美味しい・・とくれば、
若者がちょっと気張ってデートに使うのには良いのだろう。
そういうニーズの場合は、試してみる価値はあるようだ。
一緒に言った友達が一言
「早く(別の店に)飲みに行こうゼ!」
|