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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

モルト馬鹿

「注文の品、届いてます」

来ちゃったのね・・・・
オーダーしたのは私だが、何時来るかわかんなかったので忘れてた(爆)

厚さが5mmはありそうな板でできた木箱。
その中に、キッチリと固定されて入っていたのは・・・・

「グレンモレンジ・ソーテルヌウッドフィニッシュ・1981」

だった。

ロンドンのミルロイズで見つけたソレは、想像できる味もさる事ながらあまりに見事な箱にも惹かれ、
散々悩んだあげくに諦めたモルトだった。(現地価格:150£)

それは勿論、国分に強いパイプがあるロイヤル・アスコットでオーダーすれば、
間違いなく探してくる・・・と踏んでの事。

そして帰国後、そんな話をして探させていたのだ。


もともとグレンモレンジはワインの様なボトルを使っているが、
このモルトはラベルまでワイン風にされている。(文字なんか金文字だ)

ラベルには20年以上の熟成中、最初は白ワインの樽で熟成し、
最後の2年をプルミエ・グラン・クリュのソーテルヌウッドで熟成した・・とあった。


モレンジのスタンダード品は、ヘブン・ヒル・バーボン蒸留所で4年使用した樽を使うから、
その独特の香りは熟成年数に関わらず共通したモノを感じる事ができる。
そして過去、モレンジは頑固にその伝統を守っていた。

しかし1990年辺りから数々のバージョンにトライを始め、オフィシャル・カスクストレングスや
シェリー・ポートワイン・マデラ・ワイン(ローヌ、クラレット、ニュイ、ボーヌ等)等、
様々なチャレンジを始める。

そしてそれらのチャレンジは、一通りの成功を収めている・・と私は感じている。
(どれを飲んでも、個性に溢れつつ美味しいからだ)


だから、このソーテルヌウッドフィニッシュはどうしても飲んでみたかった。

しかし、ショット売りしている店は皆無。
と言うか、存在を知らない店も多く有って、購入以外に飲めるチャンスは無かったのだ。


色は少し濃く、
口開けしたばかりでは香りもまだまだ弱い。

少し口に含んでみるが、舌に何かを塗ってから飲んだように、
スムーズで軽いだけの酒にも思える。

しかしこれは何度も書いている通り、20年を超えるような古い酒の特徴なのだ。


「まだ寝てる・・・」

「あぁ、やっぱりそうですか」

「まぁ、15分から20分は待たないとダメだろうね」

「どんな味なんでしょう・・・」

「じゃ、少し飲んでみたら」


バーテンダーにとっても初めての酒は気になる物。
まして、店としても初めて入った一本・・となれば、研究材料としてお裾分けしてあげたくなる。
(過去、そうやって彼は、モレンジ1980カスクやグランレゼルバ1979等をテイスティングした)

最初に刺激の少なかったモレンジは、やがてオレンジを思わせるような味を纏い、
その後ハチミツやバニラ、アップルパイのような味へと変化していく。

しかもおそろしくスムーズで、ピート香等一切しない・・・と言うか、
ウィスキーらしさの欠片もない味に。

20年寝ていた酒だからこのような変化は想像できたし、貴腐ワインの樽を使っているから甘さも予想通り。
しかし、味の変化より、香りの変化が凄かった。


20分を経過した辺りからの事。

一振りして香りを読むと、花の香り。
もう一回振ってまた読むと、果実のよう。
そしてもう一振りで、ビスケットのような香りがして、
次の瞬間にはチョコレートの様だ。


混乱する。
このモルトには、どれくらいの香りのエッセンスが入っているのだろう・・・・と。


モレンジはヘザーやクローバーの花の香りがついた仕込み水で作られ、
自家製の酵母がフルーティさを醸す・・と言われている。

そして、10年物も18年物も甲乙つけがたい程のクオリティを持たせる姿勢は、
誇りと良心とで伝統を守る、イギリスらしいメーカーならではの物だろう。
(どっかの酒みたいに若いのは美味しくない・・なんて事は無い)


一杯に30分かけても楽しめるモルトに、また出会えた喜びは大きい。
しかし、こんなモルトを楽しむ時間を取れる事は、もっと嬉しいと思う。

日々、忙しいだけの日々を過ごし、悪戯に時間だけを費やして、
確実に鈍っていく感性に自ら研ぎを入れる行為すら怠っていた。

そして実は、鈍っていく事自体に気づかないでいたのだろう・・・と、
気がつかされる出来事が少しばかりあった。

だから、新しい場所や、普段だったら絶対に行かない場所へ出かけ、
自分の景色を求めてシャッターを押してみる。

その事は、何でもない事のように思えていた「動かない事」が、
「動けない事」だったと理解させる働きをして見せた。


常に何か、新しい発見をしていたい。
同じ物を見ても、違うように見ていたい。

それは、そう願って、そう感じようとすれば、可能な事。

そんな簡単な事すら忘れてしまうから、
日々、疲れ切ってしうのだろう・・・・・


帰りがけに、もう一杯だけ飲む事にした。
でも、次が難しい・・・・

羽毛布団の様な気持ちよさの後に飲むのは、カシミヤのような味が良い・・・と思い、
残り少ないマッカラン・グランレゼルバを選んでみた。

樽の香りが強調されて感じられるが、その味はビターチョコレートの様に思える。


あ〜 美味い・・・・


やっぱり、ただの酒飲みなんだろうか>自分

 
 
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