香港の尖沙咀にその店はあった。
「糖朝」
2199-7799
尖沙咀廣東道88号
10:00〜24:00(土・日・祝 7:30〜)
名前が示す通り甘い物(甜品)がメインの店なのだが、食事もかなり充実していてしかも美味い。
当然その人気は高く、観光客と現地人が入り乱れて、店はいつも満員となっている。
ここは「豆腐花」と名付けられたデザートが有名で、それを目当ての人も多いようだが、
これは日本人には少し辛いデザートだと思う。
何故ならこれは、絹漉し豆腐をシロップで食べるような物だからだ。
何度となく香港を訪れ、その度に訪れるこの店でこれを食べられるようになったのは、
その食べ方のコツを掴んでから・・の事。
それまでは、「どうして冷や奴に砂糖水なんじゃい!」と腹を立てたりしていたのだ(爆)
勿論、私にとってこの店は、手軽に美味しい食事ができる店・・としての認識が強い。
下手な料理店の炒飯より、間違いなく美味しい炒飯や麺等が揃っているからだ。
(今回の香港では、2種類の炒飯を食べた)
蓋付きの器(直径12cm×深さ4cm)に、いっぱい牛乳が入ったかのような物。
その白い液体に見える物がシロップに浸かった豆腐なのだが、最初見た時は面食らった。
レンゲですくって食べてみれば、絹漉しより若干柔らかく感じる、普通の豆腐。
何だよ〜・・ただの豆腐じゃん!
美味しくねぇ・・・と感じるのは仕方がない。
冷や奴に砂糖水をかけて食べる・・・なんて習慣は無いのだ。
じゃぁ、どうやって食べるのか・・??
それは実に簡単な事だった。
冷や奴を食べる時は、ほんの少しでも味の濃い醤油や薬味で、多くの豆腐を食べる。
それをそのままこの「豆腐花」にあてはめるからいけないのだ。
レンゲにシロップと少しの豆腐をすくい、豆腐とシロップの比率を1:1位にしてみればいい。
そうすると不思議な事に、シロップの美味しさと豆腐の滑らかな舌触りが
絶妙なハーモニーになって表れる。
つまり豆腐ばっかり食べているから豆腐の味ばかりを感じていたわけで、
シロップとのハーモニーを考えて食べれば、豆腐は1パートとして存在する事が理解できる・・と(^_^;)
(シロップと言ってもベタベタに甘い物ではなく、飲んでも大丈夫なくらいの甘さになっている)
ただ、これを自分で作る気にはなれない。
何故なら豆腐は冷や奴の方が好きだし、豆腐花にできるような美味しい糖水は作れそうにないからだ。
要するに、シロップ次第・・・・って事だし、そんなに甘い物が好きでもない・・・と(爆)
「豆腐花」はともかく、フルーツを使ったデザートや食事の美味さは抜群なこの店は、
香港だからこそ成り立つ・・・と思っていたら、日本にその支店ができる・・と聞いた。
これは確認するしかない・・・
香港の味がどこまで再現されているか・・を。
「糖朝 青山店」
03-5786-1555
港区北青山3-5-14
11:00〜22:00
やっぱりと言うか当然と言うか、店の前にはずらっと行列ができていた。
店の看板は香港と同じ物。
但し価格は、日本価格。
オーダーシートも本店と同じ形式の物を使い、青山らしい小綺麗な店構えがさらに客を呼ぶ。
デザートタイムに行ったおかげであまり待たずに入店でき、
本店に比べて大分品薄なオーダーシートに、どうしてもチェックしたい物を2品書き入れた。
蝦ワンタン入り香港麺 750円
糖朝特製マンゴプリン 600円
「お待たせしました〜」という声とともに、本店同様白いポットにお茶を入れてウェイターがやってきた。
これでお茶が「ポーレイ(プーアル)茶」だったら言う事は無いが、残念ながら「鉄観音茶」。
それも、とても香りの弱い、味の薄いお茶だった。
ポーレイ茶だったらコストも安く薄くなりようもないのだが、ここは日本。
あまり、安くて美味しい茶葉が入らない上に人気が無いお茶じゃ受け入れられない・・・
という判断があったのだろう。(逆効果だとも思うが)
2品が出てきて食べてみる。
「糖朝特製マンゴプリン」:日本でそう言われている物を基準に考えれば美味しい。
しかし本店の物に比べたら、良く言えば上品、悪く言えば薄い・・感じだ。
「蝦ワンタン入り香港麺」:この香りは?と一瞬色めき立つ程、最初の香りは香港のソレを想像させたが、
麺はあの細さを再現するのが精一杯で腰が弱かった。
スープは薄く最初の香港っぽい香りも何時しか消え去り、普通の麺に変わった。
蝦ワンタンは、日本に於いてはこれでも満足が得られるだろう・・・
といったレベルだが、それは十分美味しい・・という意味を持つ。
「珠江飯店」の「蝦蒸し餃子」等と比べるからいけないのであって、
値段からは正当な物と思えた。
香港の味を思い出す・・・レベルには達している事は、本店を知っている人間にとっては
嬉しくもあり、悲しくもある・・という事だが、それを望むのは意地悪だろう。
材料の力の差を如何ともし難く、結果、良くできたレプリカを
コンセプトから外れないようにコントロールしつつ、商売として成立させるしかない。
高島屋が100%出資した・・という事から同じように日本に入ってきた(入れた?)
「鼎泰豊」を考えると、その傾向が酷似している事が解る。
ただ、この店を横浜中華街の中に作ったとしたら、厳しいだろう。
本当の激戦区では、レプリカはオリジナルを超えられない・・と思うからだ。
初めての海外出店で、オープンしたての店のインプレッションは、
まだまだ落ち着き切っていないだろうから可哀想だ。
でも、身体に優しい食材を使い、美味しいものと出会う喜びや、食卓を囲んで語り合う楽しさを提供し、
心の健やかさまでも提供したい・・というコンセプトを大事にしていれば、
日本の「糖朝」しか作れない「オリジナル甜品」が生まれるだろう。
それを期待できる可能性が見えたから、もう少ししてまた、訪れてみたい・・と思った。
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