晩飯を食い損なって、深夜のコンビニに行く。
そこにいるのは、若者と酔っぱらい。
そしてやる気の無さがうかがえる店員達。
それが深夜2時過ぎの当たり前の風景だと想像していたが、
今日はちょっとばかり空気が違っていた。
「てめえじゃ話になんねぇ! 店長を呼んで来い!!」
「生憎今、店長はいません」
「いません・・じゃない! お・り・ま・せ・ん・・だろぉ〜がぁ〜」
「申し訳ありません」
レジで応対しているのは金髪の若い店員。
文句をたれているのは、風采の上がらない紺のスーツを着た酔っぱらいサラリーマン。
(どうみても「絡み上戸」に見える)
生憎・・なんて言葉が使えるだけマシだな・・と思いながら店員を見ると、
握った拳がプルプル震えているのに、何故か表情は優しげだ。
サラリーマンは、白いワイシャツにスーツと同系色のネクタイをし、
頭はかなり薄いのだが顔つきはだいぶ若く見えた。
肌の張りから私よりは年下かな・・・と想像するが、
やってる行為はまさに「オヤジ」その物。
大人げないあたりが若さの証明かも知れない・・・
「酔っぱらいだからって無視していいのか?
俺は客なんだゾ!」
「申し訳ございません」
「だからお前が謝ったって意味ねぇ!って言ってるんだ。
店長を呼べばいいだろぉ!
電話くらい持ってんだろ!!」
「ですから今、店長は外でして・・・」
「解ってるよ!、電話して話させればいい!って言ってんだよ!!」
「あの・・・」
「なんだぁ?
俺には電話も出れないほどエライのかぁ? 店長」
「イヤ・・そうではなくて・・・」
「客商売舐めてんじゃねぇ〜よぉ!」
エキサイトしたオヤジの怒声が店内に響いても
他の客達は、関わりたくない・・といった態度で背を向けている。
うるせぇよ(-_-メ)
お前の怒声を聞かされるだけでムカついてくるんだよ。
他の客舐めてんじゃねぇ〜!
と、思わず割って入ろうとしたら、店の奥にいた店員が走ってきた。
「申し訳ございません、お客様。
何かご無礼がございましたか?」
「んだぁ・・おめぇは?」
「この店のモノですが」
「名を名乗れって言ってんだよ」
「申し訳ございません遅くなりまして。
私「園村」と申します」
「・・おぉ、そ、そうか」
「如何いたしましたか?」
「おめぇが店長か?」
「申し訳ありませんが店長はおりません。
しかし私がこの時間の責任者でございます・・・」
ふと見ると、先に怒鳴られていた店員が私に向かって頭を下げている。
二人とも、今時の若い男の子。
金髪長髪で薄っぺらな身体をしている。
どう見てもケンカなんてした事がなさそうな感じ・・・。
そんな二人が、ちゃんと気遣いを見せる事に、少し驚いた。
今時の若者は、教えられた通りの接客や笑顔は普通にこなす。
しかし、今にも殴られそうな状況で、他の客が取ろうとした行動を理解し
上手に制止した上に身をもってかばう事はなかなか難しいだろう。
しかも、もう一人は酔客の後ろから私に頭を下げるのだ。
携帯を持ち揚げて指を指し、警察に電話しようか・・・と合図を送る。
すると「いらない」とジェスチャーで返したレジの彼。
自分達だけで、この大虎をコントロールするのかなぁ・・・
「お客様、どうぞコチラに・・」
レジの彼が私に声をかける。
「大変だね」
「申し訳ありません」
「俺は大丈夫だけど」
「593円になります」
「はい・・っと、どうしたの?」
「ただの酔っぱらいですよ」
「外で警察に電話しようか?」
「大丈夫です、ご心配かけて申し訳ありません」
今時の若者達にもマトモで気遣いのできる人間もいるんだな・・と
少しばかり嬉しくなった夜だった。
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