ロンドンに入って町並を見た時、18年前と変わらない佇まいを見つけて、
その頑固さと誇りと意地のようなモノを感じた。
黄色い街路灯も、石造りの建物も、何も変わっていないように見える。
イギリスにとっては、変わらない生き方が美徳なのだろうか?
ユーロができたのに使わずポンド建てを固持しているのは、
ひょっとしたら通貨に対しても誇りを持っているかも知れない・・・。
シティバンクのATMから吐き出された紙幣にでかでかと印刷されたエリザベス2世の顔を見ると、
女王の顔が見える通貨を使い続ける事は、既に生き方のようにも感じられたりもする。
町にはその配下である騎馬隊が、車の往来を止めて列をなして歩いていたりするが、
その行為を、市民達は当たり前のように受け入れ、日常の一つとして気にもしていないように見えた。
伝統を重んじ、王制を残し、誇りを持って、昔ながらの生き方を続けるのは、
その歴史の重さと力の証明なのだろう。
道行く人々に悪さをするような気配を見せる者の存在を感じない程、治安が良く見えるのも、
その誇りの為せる技だと思うのは想像がきつすぎるだろうか・・・。
老成した国は、素晴らしき社会を維持するにも明確な方向性を持っている。
付加価値税(17.5%)が支払いに乗るおかげもあって、ポンドで支払う全ての物の価格は異常に高く感じてしまうが、
高額な税は社会福祉に使われる・・という事実を現地の人に聞くと、なんとなく納得させられた。
老後は全て国が面倒を見る・・というシステムを支える税金なら、ある意味貯蓄と変わらないのだ。
だから彼等は貯蓄をせず、日々のバカ高い物価にも文句を言わないのだろう・・・・。
(コーディネーターに言わせれば、貯蓄に励む人間は殆どいない・・・とか)
日本のように税金に税金をかけるような不明瞭さを持った消費税は、
その使い道がどことなく謎めいているからこそ、不平不満が吹き荒れるのだ。
国民年金も健康保険も将来の保証ができない・・・という現実問題とその高額な設定で、
どうしても国主導の社会福祉に対しての不信感は拭いきれない。
だからいっその事、イギリス流に絶対に老後を守ってやるから高い税金(保険料)を払え・・としてしまえば、
貯蓄に回す金が減っても不平不満は減るのではないだろうか?
イギリスの地で、場当たり的な日本行政を嘆いてもしかたないのだが・・・・。
帰ったら何食べよう・・・
そう毎日思っていたわけではない。
でも、そう思わずに済むほど滞在が短いって事を割り引いても、
イギリスの食事はかなり進化していた。
ついた日の翌朝、マクドナルドが買収した・・というサンドイッチ屋に出かけてみた。
(コーヒー屋?→ドトールに近いと言えば解りやすいか・・・)
理由は簡単。
ホテルの朝食が異様に高かったからだ。(3600円相当)
冷たい飲物やサンドイッチは冷蔵ケースに並び、デニッシュやクロワッサンなどはコーヒーメーカーの側にある。
エスプレッソやラテ、マキアート等シアトルスタイルのコーヒーがメニューに載っていた。
しかし値段は決して安くない。
サンドイッチとジュースだけの食事に1000円近い金を取られてしまった。
四角の全粒粉の食パンにたくさんの具を挟んで半分に切っただけのサンドイッチは、かなりボリュームが有った。
それは三角の箱に入れられて冷蔵ケースに並んでいたが、日本のように違う具とのセットは無い。
ワンパッケージしか買えないような値段なのだから、せめて違うサンドイッチが楽しめたら・・と思うのだが、
そこら辺は食文化の違いもあるのだろう。
(前夜、打ち合わせの時取ったサンドイッチはずらっと並んだ全てが同じ物だった。
そして、ミックスサンドのようなアソートサンドイッチはメニューに無かったのだ。)
どうせ不味いパンだろう・・・
固くてボソボソの・・・
と覚悟を決めて食べたら、これがマトモな味がする。
日本の物と比べるべくもないが、こんなマトモなパンなら文句は無い。
(18年前は、歯が立たないような固さのクロワッサンを食べさせられていたのだ(^_^;))
具は解りやすい味付け(マヨネーズとかドレッシングの類を利用している)だが全体的に塩がきつめ。
寒いからそうなのかも知れないが、関東人向け・・としても少しなぁ・・・と思う感じ。
しかし、凄い変化だった。
覚悟していただけに、嬉しい変化でもあった。
どうやら変わらない事が美徳の国でも、
食べ物が美味しく変わる事は許される事らしい。
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