「週末にコンピュータが届くから・・と総務に電話したら文句言われてアッタマきちゃった」
「そんな事言ったってねぇ・・」
「特にムカつくのは、いつもの運送会社じゃない所に頼んだ事に文句つけられた事。」
「会社で契約しているところ以外入れさせない・・とか?」
「じゃなくて『高い』って言うのよ。
そりゃ、いつもの所は安いんだろうけど、週末に荷物を届けてくれないから仕方ないのね。
でもヤツらは、その金額の事ばかり言うワケ。
どうしても週末中にセットアップしないと間に合わないからそこに頼んだのに、
奴らは『何でソコなの』って言うワケね。
こっちが週末にも出社してセットアップしなくちゃいけない状況になった理由とか、
何故ギリギリまで発注できなかったか・・・って理由とかを考えてくれないのよ。」
「下っ端じゃ、しょうがないんじゃない・・?」
「違うのよ、電話口だから確認できないけど偉そうなオヤジなのね、出たの。
だからアッタマきてるわけ。
だってさぁ、口を開けば『金を使うな。高い。無駄。』ばっかり。
それも細かい事まで一々取り上げ、10円20円でも文句を言う。
会社の事情とかあるのはわかるけど、専門のSEでもないアタシが週末の早朝から
LANのセッティングや新しいPCのセットアップやんのよ〜。
その状況を考えたら、頭から『金ない』とか『差額がどうの』とか言って欲しくないのよ。
おまけに『休日出勤したら残業代が・・』とかまで言うのよ!」
「そりゃ大変だ」
「何が大変よ!
もうバッカみたい!
アッタマきちゃう!!」
彼女はガンッとカウンターを叩き、ショートドリンクをぐいっと空けてマスターを睨んだ。
「あ〜、スッキリした。
ウルサクてごめんね。
じゃ、帰るわ」
これは今日、バーで聴いた女性客とマスターの会話。
何処も同じなんだな・・とそんな彼女のグチを聞いてて感じた。
不景気だから当たり前・・で通る話も勿論あるが、かなりシビアに節約しなくてはいけない企業は多く、
私が所属している会社も同じ状況で、私も一々細かく文句を言っているように思う。
総務は出るを制す場所でもあるから、それが仕事。
文句を言う事は精神的な苦痛が伴うから、言わずに済むのならその方がいい。
しかし、自分の金ではない金(会社の経費)を使う人間に、自分の金のように節約できる人はとても少なく、
総務が文句を言うから・・という面倒くささ等によって渋々倹約している人が大半だろう。
だからそれは構造上仕方の無い事なのだが、現場から見ればそういった意見は同然出てくる。
この場合、問題は彼女の上司にある。
彼女が仕切らなくてはいけない状況を作っておきながら、
会社への詳細な報告と根回しができていないから、こういった行き違いが起きるのだ。
そして部下への教育(と言う名の状況説明)もなされていないから、
必要以上に不満ばかりが膨れてしまうのだろう・・・・。
現場に居るとどうしても自分の仕事しか見えなく、その目だけで物事を判断するようになる。
それは仕事を進める上ではある意味必要な事なのだが、監督者はそれでは困る。
会社という船をコントロールするためには、違う視点が必要なのだ。
セクションから見た状況だけで会社を判断する事は現状の把握のために役立つ事はあっても、
その行方を想像する事は無理に近い・・という事だ。
だから、上司はその責任を持たされているはず・・・なのだが。
「文句ばっかり言う・・・」と毒づく彼女の言葉に、
きっと自分もこう言われているんだろうな・・・と感じてしまう。
(総務部長だからね)
倹約しなくては毎月の給料が出せない・・なんて状況は小さい会社においては当たり前だが、
現場は働いた分はキッチリ払えよ・・という感情でしか考えられないのも当たり前。
道具が無くて仕事ができなかったら、道具が欲しいという感情は湧いてくるもの。
労働条件が劣悪なら、人を要求するのも経費がかさむのも当然の事。
その要求を全部満たすと会社が成り立たない状況にあった時、
会社側は状況に応じた範囲でしか要求を満たせない。
だから会社をコントロールする側はいつも悪者にされてしまう。
仕方が無い。
嫌われる事も仕事のうち。
しかし、痛てぇ・・なぁ〜
酒が不味くなっちまったなぁ・・・・
酒場で、仕事の話は止めにして欲しいなぁ・・・
色々な人のグチを聞いていて感じる事は、だいたい直上の上司の不甲斐なさ。
物事を客観視できないのに、会社という看板を笠に着て偉ぶるばかり・・というパターンが多い。
でもそんな事は、会社だけの事じゃない。
制服や看板に頼って、デカイ態度で振る舞ったり錯覚したりする人の多い事。
そしてそんな態度は簡単に見抜かれ、嫌われる理由の一つとなる。
「筋を通せ」という意味は
「客観視できない立場の人は、その立場にいる人に責任を預けろ」という事。
だから上の責任はデカイのだ。
きっと彼女の上司はあまり好かれていないだろう・・な、と想像する。
教育とは「現実を教えて夢を与える事」
そして愛情をもってあたる事が、大切だ。
現実を知らない上司は、教育する資格を持っていない。
夢が無ければ進歩も無い。
愛情の無い教育は認めてもらえない可能性もある。
明日が解らない今日、現実を把握できない人は多いだろうから、
今の排他的な状況は当然の帰着なのだろう。
それにしても、物事の本質を見ない人は多すぎる。
物事の上っ面だけ見て動いたら薄っぺらになるのに、
その薄っぺら加減さえ理解できない人だらけ。
簡単に儲ける事ばかりを考える企業も、それに載せられる消費者も、
過去の栄光と幻想に踊らされているように感じるのは、私だけだろうか。
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