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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

花火

誰が決めたか知らないけど、今日8月1日は花火の日・・らしい。

横浜では「神奈川新聞花火大会」が開催される・・とあって、昼間から浴衣姿の女の子がウロウロ。
こんな早くから来てど〜すんの?と尋ねたくなる位だが、それはもう若さ故。
「花火」というイベントを理由にデートを成立させる若者だってたくさんいるって事にしよう。

たぶん、今夏最高の暑さだと思う・・ほどの暑さの中、ステップ取り付け&オイル交換をのために、
会社にバイクを持ってきたが、ジェットヘルなのに顔から汗が流れる。
こんなに暑い日って、初めてかも知れない・・・と感じながら、それでもバイクに乗ってウキウキしていた。

やっぱりバイクって特別だ。


10代の頃、女の子とタンデムする事は、ちょっとしたイベントだった。

ただでさえ危ない乗り物なのに、その上離れようのない距離に座らなくてはいけないから、
余程仲が良いか、信頼がない限りは女の子も乗ってはくれない。
でもバカな若者達は、バイクさえ持っていれば誰でも後ろに乗ってくれると、信じて疑わなかった。


「今度の火曜にさぁ・・鎌倉で花火があるだけど行かない?」

「え〜花火〜ぃ?」

「何でも水中花火ってのがあるんだって」

「な〜にぃ〜? それ〜??」

「水中で花火が爆発するんだって・・・」

「何だか面白そう」

「バイク出すから・・・」

「・・・・」

「何? 信用ないの?」

「・・そうじゃなくて・・・」

「太田も来るよ。 2台で行こうよ〜」

「向こうも二人?」

「そうだよ〜」

「あ〜、一人じゃカッコ悪いから誘ったんだ〜」

「ちっが〜う」

「4人だったら車でもいいじゃん」

「馬鹿だなぁ・・車じゃ動かないし、駐車場も無いし、仮にうまく辿り着いてもすぐ帰れないよ?」

「そっか〜・・・・、そうだね」

「だからバイクで行こうって・・」

「・・・う・・ん・」

「何、僕の後ろじゃ嫌なの?」

「・・そうじゃないけど」


そうじゃないけど・・・、彼女は、せっかくだから浴衣が着たかったらしい。
バイクに跨るのに浴衣じゃ恥ずかしい。
まして2台で行くのならダブルデートのようなイベント。
どうせなら、綺麗でいたい・・・・・、と彼女は考えたのだろう。

コッチにとっては、なかなか後ろに乗ってくれない彼女を乗せる千載一遇のチャンス。
あわよくば・・・なんて不謹慎な事も考えつつ、しかし安心させる為に2台仕立てにした・・・と。
当然、下心もいっぱいだけど、二人きりで花火が見たい気持も本当だ。
そんな時間を持てる事でも幸せだ・・・と思えていたが、相手の気持ちまでは想像できなかったのだ。

要は、後ろに女の子を乗せる事ばかり考えていた自分は、
そんな乙女心を理解できないほど若造だったのだ(^_^;)


鎌倉街道の大渋滞をバイクですり抜け、由比ヶ浜に出ると左折。
葉山方向に向かって進めば、トンネルの手前に駐車場がある。
(当時はまだ無料だった)
当たり前なのだが、駐車場待ちの列ができていて、当然中から出てくる車なんていそうもない。


「な〜、車じゃなくてよかったろ〜?」

「ホント〜 すっごい混んでるねぇ〜  どこに停めるの?」

「この駐車場だよ〜」

「やったぁ〜 花火ぃ花火ぃ〜」


車の列を尻目に脇から駐車場に入った2台は、車が停められない空きスペースにバイクを停める。
既に何台かバイクが停まり、さながら二輪専用スペースのようで、停める気持を楽にさせてくれた。

渋滞の間を手を取りながら、海に向かって道を横断する。

漁網を干すためのスペースがコンクリートで作られていて、しかも道からは段差なく入っていける。
(勿論、事前に観賞ポイントを確認していたのは言うまでも無い)
開始までまだ時間があるはずなのに、すでに地元の人達が家族連れで陣取っていたりするが、
どうにか座れる場所は確保できた。


台船から火のついた花火が投げられ、水中で爆発する花火。

半球状に広がる花火を見て、これが水中花火かぁ・・と少しがっかりする。

空で爆発するより音は小さく、せっかく丸く広がる花火は半分になってしまうから、
もっと凄いスペクタクルを想像していた4人は、何となく拍子抜けした顔を向けあって苦笑した。

でも、こんな時間に彼女と一緒に居られる事は、
目の前の花火がどれほど貧相でも関係ない程嬉しい事。
勿論今日の事は、仲間内には秘密。
その事が余計に感情に作用したのだろう・・・。

だからこの日は4人にとって、とても大事な夜となったのだ。

裏道を走る2台のバイクは、いつもよりゆっくりと静かに走る。
そして打ち解けた四人は、大声で話しながら興奮を分かち合っていた。


みなとみらいにかかる橋の上には、綺麗に並んで座っている観客達がごっそりいる。
渋滞している上に路駐もいるから、すり抜けもままならない。
仕方なしに渋滞にはまっていると、座った客達の視線が痛い。
で、こっちも負けずに空を見れば、今年も変わらず派手な花火を空を染めていた。

花火の夜にバイクに乗ると、あの日の事が突然蘇る。
こんな派手な花火は無かったけど、好きな人と一緒にいる事の幸せはとても大きかった・・・・と。

 
 
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