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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

戒め

「おい、ど〜する?」

「何ですか?」

「ちょっと見てみろよ」

「うわっ こりゃだめですね」

「だっろ〜」

「ちょっとレフの角度変えてみますので、指示ください。」


三浦半島のとあるリゾートマンションのための、
パンフレット用イメージカット撮影があった。

いかにもそんなマンションを買いそうなモデルを手配してもらう約束だったのに、
プロモーションビデオ用の役者が二人、用意されている。
最初から話が違うな・・・と感じながらも、プロだから写りは悪くない・・と安心する。
で、気にしないで撮影・・・という事になったが、ファインダーを覗いて驚いた。


このマンションの売りは、マリーナのクルーザーが使えるという事もあって、
クルーザーの上での撮影となる。
女性は白のコットンシャツにジーンズ、男性は薄い水色のTシャツと白っぽいのチノパンで、
カジュアルなカップルとしてピッタリだ。

しかしファインダーから見ると男性の顔が見えないのだ。

女性はかなり白っぽい人で、ちょっと欧米人の血が入ってる?・・という感じだが、
男性はいわゆるゴッツイ系の真っ黒な顔。
二人とも白っぽい格好だから、その黒い彼の顔だけが強調されて真っ黒に落ちてしまうのだ。

こりゃ・・・困ったぞ・・・・。

普通、人間を混ぜて撮る場合、顔の下方から光りをあてて顔を際だたせる事が多い。
外の撮影の場合、そうしないと顔が綺麗に写らない事が多く、レフワークは必須となる。
で、今日も普通にレフをあてたのだが、ど〜頑張っても二人のバランスが取れないのだ。

アシスタントはファインダーを覗いてその事実を確認し、板レフ以外に折り畳み式の布レフも使って
男性の顔にきっちり光を当てた。

これでどうにかならなかったら、黒Tシャツでも買ってきてバランス取るしかないな〜
誰だよ、こんなの用意したのは?
こんなに黒かったら、ちっとも金持ちに見えねぇじゃんかよ〜
女の方は良いんだけどなぁ・・・


「ねぇ、どうしてアタシにレフくれないの〜?」

「えっ・・当たってますよぉ。 ね? ホラ光ってるでしょ?」

「・そうねぇ・・・」

「これ以上あてたら白過ぎちゃって、せっかくの綺麗な顔が写んないですよ、マジで。」

「そうかしら・・・・」


アシスタントが女性の役者から突っ込まれている。
そうだよ、アンタに当たってないんだよ。
しょうがないじゃん、男の顔が黒すぎるんだから。

モデルだったらこの状況を聞いていれば、もう少し衣装考えてくれるんだけどな。
だいたい代理店が3つも噛んでるから、仕切が悪いったらありゃしない。
ビデオと一緒じゃ、こっちのテンションが上がんないんだがなぁ・・・。

レフはきっちり男の顔だけにあたって、どうにか露光のバランスは取れた。
しかし、心なしか女性の顔が沈んでいる。
あ〜あ・・・ 気分害したな・・アレ。
ここは一発芸でもやって、笑い取って、一気撮りしかないかな・・・・


「ねぇちょっと聞いてよ・・・。
 アタシに、今までの長〜い撮影の経験の中でも、初めての事が起きてるの。
 こんなピーカンの日にレフがあるのに当ててもらえないのよ・・・・。
 ちが〜う、色が白いからじゃ、な・い・の
 太郎が黒過ぎるから、アタシのレフ取っちゃってんのよ。
 綺麗に写ってなかったら、アンタのブッキングのせいよぉ
 そう、もう泣いちゃうから・・・・
 だいたいさぁ・・・、香盤表に何て書いてあったと思う〜?
 『モデル』・・・よぉ
 ねぇ〜、アタシいつからお人形さんになったの〜?
 あっ・・ちょっと待って、太郎と替わる」

「どうも・・・・・ そんなに笑わないでくださいよ。
 これは地黒なんですから。
 でも、何んすか、この仕事。
 えらい取り巻きばっかりの現場で、仕切がごっつぅ悪くて、
 もうたまりませんワ・・・・えぇ・・・
 だから、もう笑わんでくださいって。 地グロなんですから」


ビデオのセッティング待ちの時、さっきの二人が事務所に電話している。
聞くとは無しに聞いていると、仕切の悪さをボヤいている事がわかる。
そうだよなぁ・・・女にしちゃ、自分の写りが悪かったら面白くないよなぁ・・・。
でも、レフ一つであそこまで怒るかな・・・・。


というボヤキを聞かされた。

そりゃそうだよ・・・と答える。
役者は動きがあるから、アングル内でどう動いてもアラが出ないような照明を要求する。
ビデオの場合、そういう状況では太陽にも負けない明るい照明を使ったりして、
露光のバランスを作るのは常識だ。(もちろん、レフ板も多様する)
でもそのバランスは、モニターという便利な道具で、その場でチェックできる。
そしてテレビで主に仕事をする役者は、照明を見ただけでどう写るかを理解しているから始末に悪いのだ。

ところがスチールでは、現像してみないと解らない・・・という部分がどうしてもある。
そのノウハウこそがプロの腕であり個性になっているのだが、テレビの役者にとっては
その場で確認できないメディアには抵抗感があって当然の事となるのだ。

だから、ポラロイドを撮って見せたりしながら納得させないと、
バランスの悪さなんて解ってもらえないだろう・・・と言う。

でも、スチールしかやってない人間には、そこら辺の感覚が今一理解しにくいらしい。


似たような仕事をしていても感覚の違いが多く存在する事は、
こんな話を聞いているとあらためて思い知る。
同じ仕事をしていても理解や判断が違う事は多いから当然だが、
どっかで「解ってるだろ・・・そんな事」と思い込んで失敗する例は後を絶たない。


私も「解ってるだろ?そんな事・・・」と言わないようにしなくちゃいけないネ(^_^;)

 
 
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