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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

酒宴のさなか

「今日が約束の日だ。 準備しろ。」

「そんな事言っても、死ぬなんて初めての事だからどうしていいかわからない」

「それもそうだ。 ではこの二等辺三角形を見つめていろ。
 そうすれば、何も悩まずに進める。」


そう言われて白い三角形を渡される。
不思議な事にその三角形は、両掌に乗る位の大きさで白い物だが物体の感じがしなかった。

私はそれをじっと見つめていた。
すると・・・・


目が覚めた。

変な夢を見たのだ。

ただ、自分で「死」という言葉を吐いている。
不思議な事だが、お迎えにきた・・・という事の暗示だろうか。


何かが壊れたり、死ぬイメージの夢を見た時は、
悪いモノ(例えば運)が離れたと考えるようにしている。
と同時に、身辺に注意を払うようにもしている。


そう言えば、ここ数日不可解な事が起きている。
夢もそうだが、今日も何もしないのに目の前でリングの石が、割れた。

ちょっとオカルトっぽくはあるが、これは仕方が無い。
事実として現象を確認しているのだ。


疲れている時とか恐ろしく集中している時、まったく気を抜いている時なんかに、
突然、非現実的なモノが見えてしまう事がある。
色であったり霧のようなモノであったり、場合によっては物として見える事もあるが、
それは見えている・・という誤解の上に成り立った感触のようなものかも知れない。

体調が悪い人の患部に黒っぽい靄を見たり、ボッカリ大きく凹んで見えたりする。
顔を見れば、眉間を中心に色が見える事もある。
(何か良い事あったり幸せを感じている人の場合は黄色く、
 悲しい想いをしている人の場合は青く、怒りに溢れる程赤く見える)

これは、例えば表情や仕草を見て、その動きや形を色として認識してしまう回路が
頭の中にできているだけだろ・・・と深く考えていないのだが、
明らかにそう説明できない物を見た場合は、どうしても恐怖心が生まれてしまう。

それがどんな体験かと言えば、昨日の夜の経験が解りやすいかも知れない。


いつもの店で飲んでいる時、左右を誰かが通る気配がする。
カウンターに座っているのだから、人は後ろを通る事しかできないはずだ。

しかし気配は、あきらかに私の両側を小走りに駆け抜けて行くのだ。
まるでカウンターを通り抜けていくように・・・・。

始まったかな・・・と少し思う。

何故ならソレは「何かが見える前兆」である事が解っているのだ。(何度か経験して学習した)

こんな時、何処かを見る勇気は、あまり無い。
何かが見える・・と解っているのに、それを探す必要なんてどこにもない。
どうせ見える物はロクなもんじゃなくて、見たら数十秒で消え去るモノなのだから。

努めて下を向き、酒を楽しんでいるのだが、風が頬を撫でていく。
コッチを見ろ・・と言いたげな感じが、目の前数十センチ先から流れてくる。

ふっと目を上げると、そこには女性が居た。

白い長袖のワンピースを着た老女。
灰色っぽく見える長い髪はきっちりカットされている。
頬はこけて目は二重だが皺が目立ち、眉はあるかないか解らない薄さ。

伏し目がちにコチラをじ・・・・っと見つめている。

無表情に近い顔だが恐さは無く、穏やかな感じがするから悪さをするモノでは無さそうだ。
何かを伝えたいのか? とも思うが、表情から見ると悲しげに感じる。

と突然、もう一つの視線を感じる。

カウンターの奥、しかし人間の立てる場所ではない辺りに、丸顔の男が居る。
こっちは少し険しい目をし、丸い眼鏡に丸刈りの頭で。こちらを見つめている。

で、見たくないのに見てしまって後悔した・・・

丸顔と表情が解っただけで後は無いのだ。
つまり頭しか見えてない・・・。

うわっ・・・・と思った。
で、慌てて下を向いた。

心臓がドキドキする。
何で、こんな所で現れるんだよ・・・・。

店に憑いている人達でないのは、初めて見る顔だから想像がつく。
(いつもソコで見るなら、店に憑いてるって事)

じゃ、常連客のなれの果てか・・・とマスターに尋ねてみる事にした。
もうソコに居るんじゃないぞ・・・・・と思いながら。


「この店で、ちょっと白髪混じりのロングヘアーの女性客って来た事ある?」

「イヤ・・・・記憶に無いですね。 何か?」

「それならいいよ」

「・・・何か、見ちゃったんですか?」

「・・いや・・まぁ・・・」


マスターは話を合わせるように応対していたが、
こっちはあんたが喋ってる辺りにその女性を見てたんだぜ・・・。
何だかなぁ・・・・。


そして今日、皆で酒を飲んでいる時、突然電話が鳴った。

・・・んだよぉ、もう夜中だぜ・・・・
と電話を取れば母からだった。


「どうしたの? こんな時間に」

「あのね、叔父さん死にそうなの。 今、ICUって所に入ってる・・・」


おい・・・・マジかよ・・・。
そういう事??
これの関連で、変な事が起きていたのか・・・・?


で、思い当たる事があった。

それは丸顔の男の事。

彼の顔を良く思いだして見れば、
昔、母に見せられた古い家族写真に写っていた曾祖父じゃないか・・・・。

強い目に丸い眼鏡をかけ、坊主に近い短髪で丸顔だった曾祖父。
その顔がまさにソコにあったのだ・・・・。


人は必ず死ぬ。
100%の死亡率だ。

何時死ぬかの問題はあっても、死を免れる事は無い。

だから死ぬ事に対しての悲しみはあまり感じないはずなのに、
身近な人や親しい人の死はとても悲しく感じる。

それはきっとその「存在」が、生きていく上で大切だからだ。


人は誰でも、誰かにとって大切な「存在」である。

本人が知らないところで、他人にとっても解らないところで、
その「存在」は必要とされている。

そしてその「存在」を失う事を耐え難く感じる人はたくさんいるのだ。


例え有限だと知っている命も、無限だと信じたくなるのは、
その「存在」を愛し、必要とし、大切に思っているに他ならない。

生き長らえて欲しいと願うのは勝手だと知っているが、
大切な「存在」を失いたくないと思う気持には抗えない自分がいる。


それでも、
時は止まらない。

 
 
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