たまには飲もうゼ・・・と声がかかれば、ホイホイと出かけていくのはいつもの事。
いつも同じ飲み方では飽きるから目先を変えたい・・・と思っていた時の誘いだから、
先輩のお気に入りの店に行こう・・と提案する。
加登家茶屋
横浜市西区北幸1-1-5 渡辺ビル4F
045-316-1617
居酒屋系の飲み屋としてはかなり上品な部類にはいる店。
まさに昭和20年代生まれにヒットしそうな雰囲気がある・・・と言えば伝わるだろうか。
板張りの床に、掘り炬燵形式のテーブル&カウンターといった感じだが、
古びた民家のイメージがうまく演出され落ち着く事ができる。
この手の店の特徴は、女性客が少ない事。
そして今日も、見事にオヤジだらけだった(^_^;)
こういった店は、先達に連れていったもらうに限る。
加登家はそうでもないが、小さい飲み屋・焼鳥屋の類は、
「一見客お断り」のスタイルを固持する店がまだ存在する。
例えば別の先輩に連れていかれた焼鳥屋「鳥勝」(関内)が、それに近い雰囲気を持っている。
客は全員男でしかも紺のスーツに白ワイシャツ姿。
盛り合わせでも2000円は超えそうにない絶品の焼き鳥と、安酒&ビールで仕事の疲れを下ろしている。
仲間とその店で飲んでいたとき、ちょっとカジュアルスタイルな中年男性がほろ酔い加減で入ろうとしたら、
酔った客は入れない・・・とハッキリ断っていたのを目撃した。
確かに彼は、この店で飲んでいるオヤジ達とは違うファッションで、適当に酔っていた。
店には空席が有り、断る理由は私からは見いだせない。
断られた彼は、誰々の紹介で・・・と食い下がったが受け入れられず一度店を出たが、
もう一度「一杯だけでもいいから飲ませてくれ」と入ってくる。
店は「最初から酔っているお客様はお断りしています」と素っ気ない。
確かに安くて美味しい焼き鳥がメインの店で、レバーの焼き方が殆どレアだったりするから、
材料にも味にもかなりのコダワリが感じられる。
だから、味を気にしないような客は入れない・・・というのは解るような気がする。
最初に飲む店として、酒より焼き物を味わえる客だけを相手にしたいのかも知れない。
しかし、それにしてはこの店の客は独特過ぎる。
制服着てるの?
と言いたくなるようなスタイルで、年齢的には全員40代後半以上の年輩ばかり。
女性客が一切居ないのも不思議だが、店が客を選んでいる・・とすれば納得できる。
多分、この店に誘った知人と同伴でなければ入れて貰えなかった事は、想像に難くない。
(カットオフ+ジーンズは滅茶苦茶異質で、この中で私は若造でしかなかった)
その現場を確認した日も、入店する時店主は私の姿を見て一瞬躊躇する顔色を見せた。
笑顔で迎えてくれるほんの少しの間が、私の紹介者を思い出す時間だったのかも知れない。
高度成長期に仕事一筋で生き抜いて人達が憩いの場として求める飲み屋には、
女っ気の無い事は一つのポイントとしてあるのかも知れない。
何故なら彼等は、酒を飲むのも仕事の一環。
女は仕事などしないで家を守っていろ・・という感覚からすれば、
安くて、美味しくて、話(グチ?)ができる場所に女は要らなくなる。
そういう時代を生き抜いてきても、時代はドンドン変わって現実は厳しい。
今のやり方全てが正しいとは誰も信じていないだろうが、
能力主義を進めれば絶対的平等に近づいていくから、今の形がある。
求人情報には男女の差をつける事は許されず、年齢指定も条件を満たさない限り認められない。
夫婦別姓も性差が埋まってきてこそ現実味が出てくるわけだ。
焼き物3種(肉ネギ・鶏皮・ササミの梅シソ風味)
ざる豆腐・枝豆・烏賊の刺身(肝付き)
それに生ビール2杯と冷酒を2合半を先輩と干した。(二人で8000円超)
語るのは、お互いの仕事の事。
でも、それはお互いどうでも良い事で、
元気にやってます・・という時間を共有する事が大切だ。
ただ、こんな店にも時代の流れは影響を与える。
地酒の良い物が多くあったはずなのに、尽く焼酎に入れ替えられていたのだ。
〆張も久保田も田酒も八山海もリストから落ちている。
代わりに埋めるのは焼酎&泡盛で、
プレミアム焼酎と言われる「100年の孤独」なんてものまで載っている。
ただ飲むだけなら安い物が良い・・という事で最初のブームが来た焼酎は、
長期熟成が売りになった物や原材料の違いで種類が増え、
「森伊蔵」なんて製法から材料まで拘った物まで出てきた。
それにつれ、新たなブームが来ている・・と聞いている。
質より量ととられがちな酒にも質に拘る物が出てくればブームは本物。
で、日本酒より酔う・・というアドバンテージがあれば、不景気な事も反映して売れまくる。
私も、ワインを楽しんでいて感じたのは、
口を開けたら飲みきり・・という繊細さは、結果的に高くつく・・という事実。
で、ワインからモルトに移ってしまったから、
日本酒愛好家が美味しさで負けない高級焼酎にシフトする気持は理解できる。
でも・・・と思う。
種類の揃った日本酒が目当ての客とすれば、その数を大幅に削ってしまう事は悲しい事。
ブームに乗れずに衰退するワケにいかないのはわかるが、
これだけ売り物がシフトしてしまう事はどうだろう?
私にとって焼酎&泡盛は体質的に弱いらしく、何故か一合も飲むと寝込んでしまう羽目になる。
だから安いから・・と酎ハイに手を出すと潰れてしまうのだ。
変な話だが、麦から作った焼酎のようなウィスキーは平気・・とくる。
だから、酒は面白い。
色々な日本酒にありつけなくて面白くなかった私は、飲み足りない気持を携えてロブロイに入った。
マスターが嬉しそうに言う。
「今日は、珍しいのがありますよ」
こう彼が言う時は、珍しくしかも美味しい物がある事を意味する。
カウンターの端に置いてあるサシカイヤのグラッパかと思ったが、彼の告げた物は想像を超えていた。
「やっと手に入れたんですよ、コレ。
栗を使った高知の・・・・『ダバダ火振』(^_^)」
ここでも焼酎かよ〜
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