久々に「ロブロイ」へ行く。
相変わらずの暗い店内は、落ち着いた空気が漂っている。
思わず呟いた。
「よかった・・・・」
それには、勿論ワケがあった。
誰かの会話が妙に気に障る・・という時は、二つの条件があるように思う。
それは
1 声質が耳障り
2 話の内容が気に障る
という2点の事で、その両方が揃えば少なからず不愉快な気分にさせられる・・と思っている。
もちろんどちらか一方でも充分に腹立だしい気分になれる事もあるが、
耳障りな声でも話が楽しければ面白いし、話が気に障っても良く聞こえなければ問題無いのが普通だ。
で、最近「ロブロイ」から遠ざかっていたのは、
その2点を兼ね備えた客が毎日出入りしていたからなのだ。
その客は他の常連客の間を渡り歩き、自分サイドの話を喋りまくる。
その大半はグチっぽく、そして耳障りで大きな声は店の中に響き渡る。
タダでさえ耳に残る声なのに、話の内容は楽しめない話題ばかり。
それでも前は、長く飲み続ける人では無かったので我慢できたが、
いつまでも居座るように変化してくると、そうも言ってられなくなる。
当然、店にその文句を言うワケにはいかない。
コッチにとって嫌な客でも、毎晩浴びる程飲んでくれれば店にとっては良い客だからだ。
どの店にも常連客はいる。
その客達の質で、店のイメージは語られる。
だから、常連客の変化で店の空気も変化するのは当然であり必然だ。
落ち着いてゆっくり酒を味わいたい。
最後の1〜2杯だからこそそう思うのだし、そのために静かで落ち着いた空間があったからこそ、
「ロブロイ」という客が少ない店を好きになったのだが・・・・。
そしていつの間にか、その客が来るとすぐ帰るようになっていた。
私は一人で飲む時、殆ど他の客と話す事はしない。
勿論、話をする事は嫌いじゃないから、そういう場にうち解けても良いとは思う。
だが、一人静かに飲んでいる客に声をかけてくる輩は、不思議な事に皆「大きなお世話」的話し掛けをするのだ。
まるで「常連会」に入れてあげる・・・的な物言い、態度・・・・。
店と自分との間でできている空気を、別の社会に取り込もうとしないで欲しいと思うのだが、
彼等はその「社会」が大切で価値あるモノと思っているらしい。
元気が売り切れた自分を充電するために一人で飲むのに、放電してしまったら意味が無い。
そういう意味で、他の常連客と社会を作るのは「愚の骨頂」と言える。
で、常連となっている店では他の常連客と話す事は、必然的に皆無になったワケだ。
「エッ・・もう帰っちゃうの?」
「五月蠅いからネ」(と、客を指さす)
「スイマセン」(アンタのせいじゃないのは解ってるよ)
「また、来るよ」
と会話してから、随分になる。
何度か足を向けたが、嫌いな声が店からこぼれているだけで、その都度Uターンした。
だから、思わず声が出てしまったのだ。
安堵と共に味わう酒は、一日の終わりに相応しい。
抽象的なオーダーを現実化してくれるマスターの腕も健在だ。
また、通いそうな予感がしてきたのは、酔いすぎたからではないだろう(^_^)
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