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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

忘れられない味

ケチャップが少し焦げ、独特な香ばしさが妙に美味しい。
タマネギ・ピーマン・グリーンピース・ソーセージが具の中身。
それらはケチャップとの相性も良く、粉チーズの塩味が丁度良くバランスを取る。

「あの、ケチャップの焦がし方が、美味しさの決め手なんだよね」

と言うのは山田屋の板長。

彼は素晴らしい寿司を作ってくれるが、それをつまみながら聞くネタの中には
こういった専門外の料理の話が結構あったりするのだ。


「やっぱり使う麺は、小麦粉が混じった太いヤツがいいですよね?」

「そうそう、その方が純粋に香ばしさがのるから、たまんないよ(^_^)」

「それにいっぱいチーズかけて・・・」

「へい、縁側お待ち!」


昭和40年代〜50年代、喫茶店で食べられる軽食メニューに必ずあったのは
「スパゲッティ・ナポリタン」

太いスパゲッティを野菜とケチャップで炒めたアレ。
勿論普通のレストランにもあったものだが、喫茶店のモノはちょっと焦げた香ばしさがあって好きだった。

それと双璧をなしたのが「ミートソース」だが、これはあまり好きじゃない。
何故なら食べる時いつも「ソースが足らない・・・」と悩まされるからだ。

この手の古き良き時代のスパゲッティは、20%は小麦粉を使った白く太とい麺の方が美味しい。
ソースの味がアメリカ人受けしそうな濃いものだから、麺は主張しなくていい・・という感じだろうか。

チェルノブイリ事件で売れなくなったデュラムセモリナ粉を安く買いたたいた国産メーカーは、
パッケージにデュラムセモリナ粉100%と謳ってパスタ戦争に突入した。
(放射能の危険性があるかどうかは解らないが、ヨーロッパで敬遠され値段が下がったのは事実。
 そして報道でそのような事象が紹介されているのに、本格的になった・・と宣伝する辺りが恐いと思った)

その結果、あの饂飩に近いスパゲッティという名の麺は、とても少なくってしまったのだろう。

デュラムセモリナ100%のパスタの味は、新しいスパゲッティの味を提案したが、
同時によりイタリアンに近いパスタ料理が増殖し、昔ながらの味はどんどん廃れていってしまった。

「ホフブロウ」の「ピザスパ」も同じだが、ベースに使うスパゲッティが上等になった分
その手のスパゲッティが美味しくなくなってしまうのは、当然なのだろうが寂しい事だと思う。

あの「チープな味」が食べたい・・・と思うのは、単なる記憶の為せる技と無い物ねだりの感情だとは思うが、
板長が休日に作るナポリタンの話は、やっぱり食欲のツボを刺激するのだ。


「しかし今日は何処もヒマだねぇ」

「そうですね。 ゴールデンウィーク過ぎて、一応一段落・・・なんですかね」

「ココとしてはあまり変わらない?」

「いやぁ、今日はちょっと少ない・・・ですかね」


昨日飲みすぎて反省中の私は、
今日は穏やかに飲みつつ、迷惑かけた店へ挨拶ツアーにでかけるつもりだった。
でも、お腹が空いている。
こんな時は、「ラ・ストラーダ」で軽く食べるが良い。


「新しいメニュー、今考えているんですよ」

「ふ〜ん、で、今度は何を出すの?」

「スパゲッティ・ナポリタン」

なにぃ〜???

「って、あのケチャップべたべたの?」

「はい(^_^) 日本オリジナルの・・・」


食べたい

食べたい食べたい

今すぐ食べたい・・・・


「今、作れない?」

「できますよ」

「んじゃ、一つよろしく」


頭の中には、懐かしい味の記憶がどんどん膨れていく。
こいつには、粉チーズとタバスコが欲しいが、そんなチープなモノは置いてないだろうな。
じゃ、飲む方にアクセントつけてやろう・・・・


「一緒に、薄めのシーザーを唐辛子のウォッカで作ってくれない?」


シーザーとは、クラマトジュース(トマトジュースに蛤エキスが入ったジュース)と
ウォッカで作る、ブラッディマリーの変形カクテル。
店によっては、塩・胡椒・タバスコなどを添えてくれるので、
適当にそれらを入れて飲んだりする塩辛い系のロングドリンクだ。

で、どうせタバスコ入れる位なら・・・と、唐辛子ウォッカを使ってみたらこれが美味い。
食事と一緒に飲むにはスープ代わりにもなるので、いつの間にか私の定番になっている。


「はい、出来ました〜♪」


出されたモノは、上品なパスタに見えるものだが、
ちゃんと野菜とソーセージとケチャップでできたナポリタンだ。


「粉チーズ・・・欲しい・・・なぁ?」


と言うと、出してくれたのはパルミジャーノ・レジャーノの摺り下ろしだった。


わははは
うっめぇ〜

ケチャップ味は上品に押さえられているが、具の味・香りとチーズの兼ね合いが懐かしい。
でも、本当に惹かれた香ばしさは存在しないのだが、それを補ったのはチーズの強さだった。


現代版「スパゲッティ・ナポリタン」は近日、ストラーダのメニューに載るだろう。


「これで、ミートソースがあったら、笑うよね?」

「いや、最初の頃は置いてたんですよ」

「へ?」

「ところが全然出なくって、結局賄いになっていました」

「ミートソースをパティの代わりに使った『スラッピー・ジョー』ってバーガー知ってる?」

「いえ、知りません。 モスバーガーみたいなものですか?」

「強いて言えば、モスバーガーのパティ抜きソース多目(^_^;)」

「食べ難そうですね・・・」

「昔『ジャックス』(ステーキ屋)が中華街にあった頃、定番メニューの中にあったんだ。
 食いにくいんだけど、妙に食べたくなるだな・・・」

「今は無いんですか?」

「間門に移ってからは置いてないみたいだよ」


アメリカンフードのジャンクさは半端じゃない。
でも、米軍が駐留していた横浜では、当たり前に存在する味でもあった。

ハインツのスープもTVディナーも、ランチョンミートもチリビーンズも、
何故かとても安く流通したりしていたのだ。
(それでも、肉の缶詰は滅多にてに入らない。 運が良くてコンビーフだった。)

だから、薄っぺらな濃い味でも懐かしく感じるし、
ケチャップ味もマヨネーズ味もいまだに大好きなのだ。


そのうち、「スッラピー・ジョー」も作らせようかな(^_^;)

 
 
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