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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

壁の会通信

今日は第2火曜日。
そう、「壁の会」がある日だ。

気がつけば多大なる貢献をしてしまった店で、
年間3本までボトル半額サービスが受けられるようになっていた。
(当然と言えば当然か?)
ただ、いつも隠れ家のように使っている場所ではなく、観光客が集うラウンジで・・・だが。

ゆっくり酒が飲めないと知っているから、足を向けていなかったのだが
そこのカウンターは、とて良い席だった。

座ると正面が窓で、そこからは横浜港が見える。

客は多く、カウンター内では3人が機械のようにカクテルを作っていて、
バーテンダーとの会話なんてできる状況ではないが、その分は景色が埋めてくれるのだ。

誰かと話がしたい時には向かないが、一人で軽く飲むにはなかなか良い。
で、ボトルを置いてスターターを飲むのには、これもまた良いな・・と思った。


半額でボトルが買えるのなら、ボトルのチョイスの方向性が変わる。
珍しい物より高価な物。(故に珍しくなるのだが)

つまり高ければ高いほど、割引額も大きくてお得(←何処が?(^_^;))と考えれば、
普通は清水の舞台から大ジャンプしても入れられないようなヤツがターゲットとなる。

と言う事で、マッカラン25年(1975)がカウンターに置かれるようになっていた。


メンバースと共に70階を目指し、フレンチ95の後にマッカランを味わう。

歳を取ったモルトは、グラスに入れてもいきなり飲んではいけない。
ちゃんとエアリングして、香りが立つのを待った方が格段に美味しく飲める。


夕方、ディナータイムのカウンターは、酒を飲む人数が少ないお陰で、余裕がある。
暮れなずむ港を眺めながら傾ける酒は、なかなかのモノ。

そんな感想をバーテンダーに言うと、
ボトルキープの客は午後に来てずっと飲んでる・・・と教えてくれた。
ティータイムでもボトルを出すのは上も下も一緒らしい。
夕方の空いた時間を利用するのが一番賢い利用法だろう。


3杯目はいつものバーで飲む事にする。

今日の壁は12本。
もう在庫無しと言われたレゼルバの1979が手に入り、モレンジのシェリーウッドも登場する。
たまたまカウンターにいた客2名は、その異様な姿の毒気にあてられ顔色無し (^_^;)

グレンリベット18年 マッカラン18年グランレゼルバ(1979)ダルウィニー15年、
グレンモレンジ(シェリー)と楽しんでいると、横に座って呆れていた客が絡んできた。

「最近のモレンジは良いですよ」

彼がキープしていたのはモレンジ10年だったが、自信ありげにすすめてくれる。
で、ご相伴に預かると・・・・・・美味い(^_^)

そう言えば、マッカランの7年〜12年もバランスが良くなっているし、
新しいラディック10年も美味しくなっていた・・・。

高価な18年以上の酒がダメになり、若いモノの方が良い・・・という事は、
1980年代前半の酒が尽くダメなのか、作り方の技術向上があったのかも知れない。
(元が良くなければ、熟成を重ねても良くなる部分は少ないと思う)

しかし、それでも環境破壊は続いているし、地道な作り方はだんだん廃れていく方向だから、
利益追求型の表面だけ素晴らしい酒は増え続けていくだろう。


テイスティンググラスを傾けながら味わう酒は70年代から80年代のもの。
そして明らかに70年代のモノの方が美味しいのは、
アドベック1975、グレンリベット26年(1972)を味わえば良くわかる。
(しかし、既にストレートで9杯も飲んでる・・・)

もう70年代の酒は手に入りにくいからちょっとづつ飲むのだが、飲んでいてふっと気がついた。
今、目の前にいるバーテンダーと似たような歳だな・・この酒・・・と。

で、彼にこの手のモルトを飲んだ事があるのか?
と尋ねてみると、飲んだ事が無い・・・と言う。
ならば、無くなる前に飲んでみろ・・・と飲ませてみた。


自分の生年と同じ年に醸造された原酒は、自分が生まれた年の風を纏っている。

そして自分と同じだけの時間を持って熟成されている。

だから、私だって自分の生年と同じ醸造年を持つ酒は飲んでみたいのだが、
それは既にかなわぬ夢でしかない。

美味しいモノ・・特に嗜好品、
それも熟成によって変化していくモノはすべて、
その時間の過ごし方で顔が変わるもの。

だから、味わう時は一つの「出会い」として考えている。

同じ名前のモノでも微妙に味が違っているから、
一つ一つが「出会い」になるのだ。


バーテンダーは「心底美味しいと思います」と感想を漏らしたが、
味わいの分析はまだ難しいだろうと思う。

しかし記憶の中に、一つの規格が出来あがった事は間違いない。


記憶はその形を無意識に美化してしまうもの。

しかしそれが無ければ、想像も創造も難しい。

だから、その数はいくら多くてもかまわないのだが、何事にも限度はある。
で、それを選ぶ必要が発生するのだが、選ぶ事は困難を極めるだろう。

だから、「これは飲んでおけ」とバーテンダーに飲ませたくなったのだ。


今年仕込んだモルトは2020年あたりに飲む事になるだろうが、
その時の味はどんな顔をしているのだろうか・・・・。

 
 
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