「みなとまつり」がある日、横浜はいつも雨交じりになりやすい。
毎年中継する「国際仮装行列」は、その天気にいつも悩まされていた。
しかし今日は、そんな気配が一切無い良い天気。
果たして、恐ろしいほどの観光客が横浜に殺到した。
桜木町のコンコースは「立ち止まるな〜」とアナウンスされ、
みなとみらいも赤レンガ倉庫もグチャグチャの混み方。
中華街は、どこからこんなに来たんだよ・・・と言いたい位の人出で、
29日の混み方なんてまだ、可愛い方だった。
聞けば、安近短の娯楽を求めて出かける人のせいで、鎌倉駅も大変な事になっていたとか。
江ノ電に乗る人が駅のロータリーを埋めるように列をなし、
アミューズメントで良く見られる順番待ち行列を作っていたらしい。
コスモワールドにも山ほどの列ができ、どれかに乗れるだろうと列に並んでいたら、
1時間半たってその列がファーストフードの出店に繋がっていた事に気がついた人もいる。
TDLは、待つ間も楽しめるような工夫を凝らしてあるが、
みなとみらいにも中華街にもそんな工夫なんてあるはずもない。
だから、待ちくたびれた人は、ただただ時間の浪費を「贅沢」と感じる事もできないだろう。
こんな日、ロイヤルアスコットは、唯一ゆっくりできる場所かも知れない。
外も見えないホテルのメインバーは、午後3時からティータイムをやってくれる。
勿論ボトルがある私が行けば、当たり前にボトルを出してくれるから、
酒でもお茶でもサンドイッチでもケーキでも楽しめるわけだ。
しかも、バータイムより明るくされた照明のお陰で、
昼間っから酒飲んでる・・・という「贅沢」を満喫する事もできるのだ。
観光地で、行き交う人々を見ていると、昔ほど腹が立たなくなった事に気付く。
なんでこんなに混む場所に来るんだ・・・と怒っていた自分は、
この日にしか家族揃ってでかけられないんだ・・・と想像できるようになっている。
迷子にならないように・・と幼子の手におおきな風船を縛り付ける親。
両手で両親に手を繋がれ、人混みに疲れながらもその充実した時間を焼き付けている子供。
こんな時間って、自分には存在しなかったな・・・・と、感じる。
なんとなく羨ましく見える家族連れは、ある意味幸せの形。
両親と両手を繋いで歩いた事が無い自分は、その形だけでも眩しく見える。
行く先が、煌びやかな上辺だけのスポットであったとしても、一緒にでかける努力には変わりがない。
ただ、どうせ家族揃ってでかけるなら・・・・と思ってしまうのは何故だろう。
歴史的建造物を保存しても、外側だけ残したようなやり方が今風なら、
そんな現代に生きる人達はやっぱり上辺が大事なのだろうか。
本物自体が減りつつある今、本物を知らない事は恥ではなくなってきた。
だから「上辺だけ良ければいい」という文化を否定するのは「古い」という事かも知れない。
その事を理解したとしても、疲れ切った家族連れを見ていると、
「家族で一緒にいる時間の過ごし方を、もう少し大切に有意義に考えたら?」
と言いたくなる。
無くしてしまったモノや元々手に入らなかったモノを知っている、私としては・・・。
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