仕事を終えて、晩飯がてらに軽く飲みに行く。(毎度の事)
連休の最中に観光スポットのど真ん中で仕事をする事は、
食べる事、飲む事に、著しい不便を感じる事を意味する。
混んでいる事を承知で歩き回るが、すでに中華街は閉まっている店だらけ。
それでは・・・とランドマークを目指した。
金曜日に、仲の良かったバーテンダーがいるから・・と顔を出した「シリウス」(70階・ラウンジ)
ここのバーカウンターは海が見える窓があって、なかなかの雰囲気を持っている。
だからゲスト用に、スターター用に・・・と、ボトルを一本入れておいた。
(半額チケットがあって割安だったし、チャージが無料になるからお得だった)
どうせ混んでいるだろう・・・と思いつつもちょっとだけ覗いてみた。
深夜11時半だというのに、エレベーターホールにまで人が溢れている。
ボトルカードを見せ、カウンターのみの使用ができるか?と尋ねてみたが、
そんな状況では無い事は案内係の表情ですぐわかった。
それじゃ・・・といつも通りの「ロイヤル・アスコット」(2階)を目指す。
さすがに連休、もうすぐ12時だというのにカウンターはほぼいっぱいだったが、無事シートを確保できた。
ガンガン飲む女性がワケ有り男性を同伴しているカップルが二つと、単独の男性客。
部屋へ戻ると帰っていったカップル・・・と、まぁ順当な客構成に見える。
不思議に思ったのは、一人で座っている男性客が小説を読んでいる事。
決して明るくないこの店で、カウンターに座って小説を読む?
それって、どうなのだろう・・・・。
バーは酒を飲む所であって、図書館ではないのだ。
寿司屋のカウンターに近い場所で、大して飲みもしないで小説に没頭するのは
その人の飲み方だ・・・と無理に考えても、おかしな行為に見えてしまう。
喫茶店で小説を読む人は確かにいるが、そういうノリなら2人掛けのテーブル席の方が良いと思うのだが。
偶然そこにしか空きがなくて彼の横に座った私は、仕事終わりの一本を吸うべきがどうかとても悩んだ。
溶けた氷で量の増えたロックを前に置き、タバコは吸わずに小説に没頭している。
シガーケースを出してもバーテンダーはいつもの専用灰皿を出さないので、
この客には遠慮した方が良い・・という事は理解していた。
閉店まで彼が居座るつもりなら、今宵の一本はお預け・・・という事になりそうだ(;_;)
(コロナサイズだと1時間以上はかかってしまう→時間切れ)
「シリウス」はこの時期、観光客でメチャ混みになるらしい。
11時半でウェイティングシートに収まりきらない客は、
運良く座れたとしてもワンドリンクで追い出されてしまうはず。(閉店1時)
そこまでして夜景を見なくても部屋から見えるじゃん・・・と思うのだが、
落ち着いた雰囲気を漂わせる「外の見えない」この店に降りて来ないのだから、
景色こそが価値あるものとして位置づけられているのは間違いない。
そのおかげでクリスマス・イブでも座れるのだから、「シリウス」様々・・といったところか(^_^;)
あまり飲まない勝手な客に遠慮して、楽しみを堪えすぎるのも面白くなく、
ちょっとだけ反撃にでる事にした。
シガレットケースから「パルタガス・クラブ」を一本取り出し、おもむろに火を点ける。
15分も持たないシガリロだが立派な葉巻。
タバコ並の大きさのくせに充分なアロマが楽しめる逸品で、常備品として携帯している物だ。
これが、じっくり酒と対峙し楽しんでいる客だったら、一切火を点けなくても納得できた。
自分自身、良い酒の香りを楽しみたい時、気になる匂いを撒き散らされたらムッとするからだ(^_^;)
彼の両隣ではバンバン煙草を吹かすオヤジがいる・・・というのも、その行為に対する罪悪感を軽減してくれた。
独特な香りが漂いだし、バーの空気が変わっていく。
お疲れさま・・・と自分自身に呟き、グラスを傾ける。
5分もした頃、単行本を閉じてグラスをグイッと煽ったその客は、ビルにサインをして出ていった。
酒場のルールは難しい。
酔っぱらいは皆ワガママで、質が悪い。
同じ立場で飲む以上、自分だけのワガママを通す事は下品でみっともないが、
他人のワガママを耐え続ける筋合いもまた、無い。
こんな場合どうするべきか、
まだまだ青い私にはわからない・・・・。
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