突然、店内の照明が消えてゆく。
「ほらね、はじまっただろう?」
「これがさっき話してた、誕生日イベントっすか?」
「これで、ナレーション入って、蝋燭付きのケーキのご登場・・・と」
「若者が好きそうなイベントっすねぇ・・・」
肉が食いたいってヤツがいて、最近焼き肉すら食べていない事に気付く。
じゃ、思いっ切り食おうって話がまとまって行ったのは
ハードロック・カフェ 横浜
横浜市西区みなとみらい2−3−1クィーンズタワーA棟1F
Tel.045−682−5626
ここはご存知の通りハードロックがガンガンかかったレストランで、
いい加減にしろよ・・・と言いたくなる量を誇るアメリカン・フードが揃っている。
ここの系列(というか、経営母体(WDI)の持つレストラン)には、
Tony Roma's トニー・ローマ(バーベキューリブ)
Capricciosa カプリチョーザ(イタリアン)
といった量を誇る著名なフランチャイズもあり、
Century Court センチュリーコート (インターナショナル・シティ・クラブ/旧プレイボーイクラブ)
Spago スパゴ(カリフォルニア料理)
RainbowRollSushi レインボー・ロール・スシ(アメリカン・スシ)
Primi Baci プリミ・バチ(トスカーナ料理・イタリアン)
Kyogyu-So 巨牛荘(焼肉)
Babba Gump Shrimp ババ・ガンプ・シュリンプ(海老料理・シーフードレストラン)
Outback Steakhouse アウトバック・ステーキハウス(ステーキ)
なんて店もあるようだ。
WDIは、「ケンタッキーフライドチキン」を日本に出店し、「プレイボーイクラブオブトーキョー」を開店、
「シュウウエムラ」までてがけた会社でもあるからか、
そのフランチャイズビジネスはまさにアメリカ・・・と言えるだろう。
そのアメリカっぽさがプンプンするこの店では「誕生日イベント」が存在し、
店の客全員で祝う・・・といった脳天気な風景を目の当たりにできる確率は、
今までの経験上かなりの高率だと感じている。
そんな話をヤツとしていた時、まさに店の照明がいきなり落ちたワケだ。
「お客様のお呼び出しをいたします。
・・・・さん、いらっしゃいましたら、レジまでいらっしゃってください」
真っ暗な状態で、何だか変な呼出。
名前を呼ばれた女性が立ち上がるが・・・・
「・・・今まで、色々迷惑かけたけどぉ、
・・・これからも俺が引っ張っていくからぁ・・・」
突然、訳の解らないセリフをマイクで怒鳴りだしたヤツがいる。
その店に居た客は、全員、間違いなく誕生日イベントだと思っていたから、
皆、声の出る方向を注視した。
「結婚・・・・しよう!!・・・」
おぉ・・・、これは公開プロポーズだ・・・・
一瞬の間があって、立ちつくした彼女はワッと泣き出し、
そして店内は拍手と歓声の嵐が吹き荒れた。
「こんなん、初めて見た・・」
「テレビの見過ぎじゃねぇの?」
さすがに、演出が過ぎるプロポーズには、若さという名の蛮勇を感じて苦笑してしまった。
しかし、プロポーズするよ・・・と打ち合わせしてデートする奴はいないだろうから、
店で演出がかったプロポーズをするにはそれなりに勇気が必要だ、とも思う。
「もし断られたら、立ち直れないよなぁ・・・」
「二度と、この店に来る気にはなれねぇかも(爆)」
シャウトと称する店員によるダンスパフォーマンスがあり、皆の前でキスさせられ、
蝋燭付きのケーキと記念撮影・・・というイベントが進む。
こりゃ、珍しい物見た・・・と思いながら、かなり昔付き合った女性の友達の事を思い出した。
「夕方の、ある国内線にのって沖縄方向へ飛ぶの」
「それが、凄いプロポーズ?」
「ただ飛行機に乗るんじゃ意味ないの。 夕方って事に意味がある。」
「もしかして?」
「そう、夕日がずっと見えたままで、目的地まで飛ぶんだって・・・
で、『君にこの夕日をプレゼントしたかった』って言ったんだって・・」
「オイオイ、それ・・・マジ??
・・・・で、返事はどうなったの?」
「ポ〜っとなって『ウンッ』て答えちゃったんだって」
「雰囲気に乗せられて、一生の事決めちゃうもんかね?」
「やりすぎよねぇ・・・。 でも、そうしてくれたら、嬉しいかも・・」
「そうして欲しいわけ?」
「あはは・・・・」
何でも、プロポーズした彼は、その日その便のその席を確保するために、給料一ヶ月以上の出費をしたのだとか。
そんな無駄金あったら二人で楽しんだ方が素敵だと言うと、そういう演出が好きな娘なんだと彼女は説明した。
「・・・で、理想的なプロポーズを受けて、彼女は幸せな毎日を過ごしているの?」
「いや、そうじゃない」
「なんで?」
「もう、別れちゃった・・・・」
カッコつけただけの彼氏の薄さは生活の中ですぐにバレ、ケンカ別れになったとか。
そんな事を思い出しながらそのカップルを眺めてみると、
彼女は黒のワンピースで、かなりのフォーマルにも耐えられる着こなしをしているのに、
彼氏はモスグリーンの麻混のジャケットとチェックのシャツ、
それに黒の革パンというかなりのカジュアルスタイルで、バランスが悪い。
きっと「今日、プロポーズがあるんだ」と、彼女はちゃんと準備をしていた。
「ハードロックカフェ」は単なる待ち合わせ場所で、ちゃんとしたレストランに行くものだと、思っていたはずだ。
だから呼出を受けた時も、喜んで立ち上がったのだろう。
そして、演出に満ちたプロポーズをされて、確かに感激はしたかも知れない・・・。
しかし、その表情には複雑な気持ちを反映した影が見えたのは気のせいだろうか・・・。
この店にはピッタリのファッションでいる彼と、浮き上がる位に上品な彼女。
そんなカップルのチグハグさが、その将来を暗示しているように見えた。
180グラムのパティが乗ったハンバーガー(プレーンバーガー/1360円)がテーブルに出る。
あまりに派手なイベントに気を取られ、食べる事を忘れていた(^_^;)
指から全部のリングを外し、
パティにケチャップをかけ、オニオンスライス・ピクルス・トマトスライス・レタスを乗せ、
上から挟むバンズにマスタードを塗って乗せ、上からグッと押せば、出来上がり。
ナイフとフォークで食べる奴もいるが、私の場合は両手で掴んだらもう、一気喰いだ。
トマトとケチャップとマスタードがこぼれていくが、この場合気になんてしていられない。
口の廻りが汚れても、最後に拭けば済む事なのだ。
クアーズを飲みながら食べる、ボリューム満点のハンバーガー。
健康に思いっ切り良くない・・・と思いながら、溢れる肉汁を堪能する。
やっぱり、こんなジャンクフードも、大好きなんだなぁ・・・(^_^)
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