「ずるいっすよ〜」と部下に言われる。
「亀の翁」の話をしたら、「夢にまで見た幻の酒なんですよ〜」と。
「わかったよ、んじゃ飲みに行こ・・・」と約束。
で、その日を今日にしておいた。
この前この店に来た時は、最初に頼んだ鰹の刺身に生にんにくスライスがトッピングされていた。
それを食べちゃって思いっ切り味覚が変わったのを
ビールで洗い流しはしたものの、その影響が皆無だったとは言い難い。
だから、最初っから「亀の翁」とお付き合いしたい・・・と、思っていた。
店は野毛、サラリーマンの集う町。
出足が遅いと座れないかも知れない。
夕方が近付くにつれ、なんだかソワソワする。
「もう仕事や〜めたっ」と叫んで、オフィスを飛び出した。
店にたどり着いたのは6時半を過ぎた頃。
自分としては信じられない時間に、飲み屋に入る。
ゲッ・・・・いっぱい・・だ!?
運良く2人が座れるテーブルが空いたばかりのようで、机の上を片付ける間待っただけですむ。
しかし、こんな時間に満席かよ〜 と、部下と二人で呆れていた。
「もう、真っ先にいきましょ、亀の翁」
「・・・いきなり?」
「何も食べないうちに飲まなきゃ、味わかんないじゃないですか」
「・・・・だねぇ(^_^)」
何も出ないうちに亀の翁(1合:1500円)を2本頼む。
ガラスの徳利とガラスのぐい飲みが出る。
最初だけお互いのグラスに酒を注ぎ、お疲れさまと声を掛け合ったが、
二人とも酒の方しか見ていない。
いただきました。
前回感じたよりも、少し甘く、そして日本酒らしい香りが漂う。
飲み口は水のように爽やかなのに、しっかり味があって嫌味が無い。
日本酒の嫌い匂いや味の類を全て取り去って、美味しさだけを残した感じがする。
少し弱い・・と思うのは、邪魔物が無いからそう思うのだろうか。
とにかく飲みやすい、そして美味しい。
飲んだ後の心地が、なんとも言えない気持ちよさだ・・・・。
部下は最初、声も無い。
そして、今まで飲んだ日本酒の中で、一番美味しいと感想を漏らした。
不思議な事に、料理にも合う。
最初に出された「肉じゃが」が、酒によって一段と美味しく感じられ、
その後に飲むとまた、新しい美味しさが湧いてくる・・・。
あっという間に一合を飲みきって、すぐ2合追加となった。
こっちのペースが早すぎるのか、料理がでて来ない。
ならば・・・と、厨房まで行って塩をもらってきた。
(塩は鈍った舌をリフレッシュし、酒を美味しくしてくれるもの)
オヤァ・・・・? この塩は??
小皿に盛ってくれた塩は、結晶の大きな物だった。
舐めてビックリ、こりゃぁ美味いゼ!!!
(この塩分けてくれぇぇぇ・・と叫びたくなる。勿論ペペロンチーノ用にだが)
この店の料理が美味いワケだ。
こんなに良い塩使ってる。
2合目は、口開けとなった「亀の翁」
塩を舐めてから頂いたらもう・・・・・・、うんめぇぇぇ・・・・(声出ず)
さっき飲んだモノより、香りが豊で味が濃く感じる。
後味の良さは変わらないが、すこし色っぽくなった感じだ。
十四代とかが派手な姉ちゃんとすれば、亀の翁は浴衣美人といった感じか。
線が細いようで、しっかりしている日本的美人といったところ。
惚れちゃいます(爆)
「焼き鳥四種(八本)」「肉豆腐」「ウドの酢味噌あえ」と頼んでも、
心はずっと亀の翁に向いてしまう。
料理を引き立て美味しさが増すからか、ずぅ・・・と主役の座を降りてくれないのだ。
「すみません・・・越の寒梅・別撰を一合お願いします」
「あらぁ、浮気するの?」
こういうやりとりができるのも、この店を気に入っているところ。
越の寒梅は同じようなキャラクターを持った名酒だから、比べてみたくなったのだ。
(酔っぱらってきたから、味も解らなくなってきたし・・・と)
「・・・・これ、水」
「・・確かに、美味くない・・・なぁ」
穏やかで線が細いわりにしっかりしている・・と思っていたはずの寒梅は、
ただの薄い酒、いや酒の影を纏った水に、感じられてしまった。
なんと罪作りな酒だろう・・・・。
亀の翁4合、寒梅・別撰1合、と上記のつまみを頼んで、10200円也。
肩から上だけがメチャクチャ気持ちよく酔っぱらい、時計を見ればまだ8時過ぎ。
このまま終わってもいい・・と思うほどの気持ち良さだが、
気が付けば二人とも酒の事しか頭になく、話もしてなかった事に気が付いた。
「んじゃ、もう一軒行こ!」となるのは当然の流れ。
二人で教育期間中のバーへ向かったのは言うまでもない(^_^)
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