「亀の翁」(久須美酒造:新潟県三島郡和島村大字小島谷1537-2)という酒がある。
「夏子の酒」というマンガで一躍有名になったが、幻の酒米「亀の尾」を使っている酒として人気がある。
しかし、そういったメディアで紹介されると「どうしても飲みたい」と思う人が増えるからか、
元々数の少ない酒がさらに品薄となり、横浜辺りでお目にかかるのは至難の業となっている。
当然、普通の酒屋になんて有るわけも無い。
同じ久須美酒造の「清泉」や「夏子物語」なら、マニアックな店にある事はあるが、
「亀の翁」亀の尾100% 精米歩合 40% 純米大吟醸
「亀の尾」山田錦100% 精米歩合 40%以下 大吟醸(品評会用)
「亀の王」亀の尾80% 五百万石20% 特別純米酒
となるともう予約販売を受け付けてくれる店を探すだけでも大変になるのだ。
じゃ、飲ませてくれる店に行こう・・・と思うのだが、アソコにあったよ・・・と聞いて行ってみても、
空瓶や空箱がディスプレイのように置いてあるだけって事が多い。
しかしそれは、入る可能性があるって事。
だから箱を見つけたら、必ずあるかどうか尋ねるようになった。
随分前、何かの仕事の打ち上げで顔を出した店に、そのボトルを見つけた時は興奮した。
ただその時はもの凄い混み方で、普段誰も使わないだろう狭すぎるカウンターに座るしかない状態だった。
ゆっくり味わいたい物を慌てて飲むなんて事はしたくない。
きっと縁が無かったのだろう・・・と諦めて、ビールを一気飲みして店を出た。
今日、偶然にもその店の傍を、会社の同僚二人と通りかかった。
店の入り口のショーケースに、さりげなくボトルが置いてある。
(ここで、置いてある物が箱でなくボトルである事に注意したい。
箱だけもらってディスプレイする店も多く、そんな店は酒を入れるルートを持っていない事は
過去の経験よりよ〜く解っている事なのだ)
時間的にも腹が空いている時間なので、3人で入った。
料金はリーズナブルで、酒は殆ど新潟の物ばかり。
ビールを頼みながら頼んだツマミは、
鰹刺身、肉豆腐(鶏肉と豆腐の柳川風)、サラダ、焼き鳥おまかせ(10本)うどのぬた。
生ビール(中ジョッキ)を2杯ほど空けた頃、一合だけ酒を頼もう・・という事になった。
酒のリストを見ると、久保田、〆張鶴、越乃寒梅、景虎、八海山等の
新潟の酒に加えて田酒(青森:最近人気が出て高くなってきた)も揃っている。
そして、「亀の翁」があるではないか・・・・。
(あるはずだと思って入ったんだけどね)
値段が2000円を切っているので、量を尋ねてみると1合だと言う。
(グラス売りと称して、半合程度しか出さない店もあるので)
勿論、頼みました。
柔らかい、穏やかな味。
日本酒らしい甘みと香りがあり、雑味や味付け用の別の物は感じられない。
強すぎず弱すぎない後足、と言うか、酔い心地が気持ちよく残ると言うべきか。
こりゃ、美味いねぇ・・・・・
と言ったきり二の句が継げない感じがした。
抜群に香りが強いわけではなく、ボディがどっしりしているわけでもない。
平凡な味にも思えるが、バランスが良くて出しゃばった所がない。
で、美味い・・・と思うのは、相当レベルが高いところで調和がとれているのだろう。
ちょっとだけ後悔したのは、
最初に生ビールなんて飲むんじゃなかったって事。
腹減っているからと、ガシガシ食わなければ良かったって事。
だからもう一度、「亀の翁」と対峙するためにこの店に来る
って事になるだろう。
そう心に刻んで、いつものバーへ足を向けた。
えっ?
いくらだったかって?
生ビール4杯と亀の翁1合、上記のつまみで9036円也。
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