ふらっと走りたくなる。
深夜11時。
向かうは海方向。
半月より膨らんだ月が浮かび、冬らしい澄んだ空気が星々を際だたせている。
今宵は車で我慢しよう・・・と自分に言い聞かせ、横々をリミッッターが効かない程度のスピードで流す。
横目に飛び込んでくる月の光がやさしい。
穏やかな心地よさ。
あっという間に、逗子に着く。
無意識に長者が先に向かっている。
誰も居ない駐車場。
フィッシャーマンズ・カフェも閉まっている。
年末のように富士山は見えないものの、江ノ島がシルエットとして浮かび上がり、
月光が海に輝いていた。
波の音が大きい。
肌寒い夜、心が覚醒していく。
贅沢な時間を味わうって、やっぱり必要だな・・・と、再認識。
しばし佇んでいた。
帰りに「菊水亭」に寄る。
何だか、前来た時より暗い。
でも、この程良い暗さが、妙に落ち着く。
忘れていた時間。
忘れていた落ち着き。
無意識に取り戻そうと心が動いたのか、
求めている心に背を向けていたのか・・・・
わざと海沿いを走り、腰越で右に曲がる。
20年前の記憶が強烈に蘇り、時の流れを味わいながら、
今の自分の位置を確認していく。
このコーナーは120km/hで曲がるのが恐かった・・・・
この坂でバイクが壊れた・・・
ワケもなくこの店に来て、コーヒー一杯で午後を過ごした・・・
この駐車場で朝まで彼女と語った・・・
この道を走りながら、初めて手を握った・・・・
誰もいない贅沢もあるんだな・・・・と感じる。
たまにはこんな夜もあっていいんだね。
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