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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

D&D

横浜中華街にあるイングリッシュ・パブにて、酒を飲んでいた。

由緒ある気に入っていた店だったが、代替わりして(居抜き?)名前が変わる。
と同時にスタッフも変わっていた。
仕事の話も絡んでいたので、珍しくカウンターに座ったのだが、
横浜ではあまりお目にかかれないフード等を頼むと、切れている・・と言われる。
仕方がないのでギネスのビターやバスの生等で腹を膨らせていたが、
バックバーに並んでいる酒瓶が妙な事に気がついた。
酒瓶が並んでいても、酒が入ってないのだ。

お気に入りのモルトが飲みたいのに、あるのは瓶だけ。
新しい物を仕入れられない程、客がいないのか・・・と邪推をしながら、
同僚と飲んでいた。

バーテンダーも、ウェイターも、下品な錆色の髪をしてボーっとしている。
客もまばら。
これでは・・・と思っていたら客が入ってきたが、ウェイターの友達らしい。
ダボダボの半ズボンにTシャツ、ベースボールキャップからはみ出す髪は金髪で、
連れの彼女も似た風情。
カウンターの前でイスに座らずに、だらだらと立ち話を続けている。

類は友を呼ぶんだなぁ・・・と感心してしまった、と同時に、
こんな子供だらけの店になるんじゃ、これから先も期待できない・・とも感じる。

パブとはパブリックハウスの略で、プライベートスペースではない。
友達の家に来たのではないのだから、少なくとも店員側は線をひくべきだ。
それは客商売として最低限のルール。
ガキだから・・・と、許されるものではないはずなのだが・・・・。


その時、
携帯の着メロが鳴る。
携帯の持ち主はウェイターだった。
彼は話ながら友達カップルを座らせ、しかしそのまま話続けていた。
客が少ないから・・・と言って、ウェイターが店の中で携帯で話し続けるなよ・・・と、
ちょっと不快になってきたら今度はバーテンダーの携帯も鳴る。
で、同じく彼もカウンターの中で話しだし、客そっちのけでそれに夢中になっていく。

アンテナトップが青く光り、
アンバー系の照明の中で妙な違和感を与えるアクセントになっている。
それを眺めていたら、今度は客の男も携帯で話し出した。
切る気配など微塵も無い。

彼女を連れてカウンターに座って、携帯で話しているなんて信じられない。
私が彼女の立場だったら、面白くないと思う。
横の男も、目の前のバーテンダーも後ろにいるウェイターも皆、携帯で話をしているのだ。
当然、いい加減にしろよ・・・と怒るだろうと思ったら、彼女も携帯を出し誰かと話しだした。

実に妙な風景だと思う。
マナーがどうの・・・と言うよりも、何故外で飲んでるの?と尋ねたくなってしまう。
誰かと電話で話したいのなら、わざわざ外で高い金を払って酒を飲むなんて無駄だ。
何が楽しいのだろう・・・・と、興味すら沸いてくる(笑)

彼女の携帯は、アンテナトップが色が変わりながら回るタイプで、
携帯の背も別の灯りが点滅するネオンサインのような機種だった。
煌びやかと言うか、派手と言うか・・・・、しばし見とれていたら彼女の会話が終わった。
しかし、それ以外の人達の会話はまだ続く。

彼女は少し溜息をついてから、バッグを開けた。
取りだしたのはメール用の入力ボードだった。

その店は、上質なモルトを楽しみながら会話を楽しむ大人が集う、
横浜にあって欲しいパブだった。

今は、珍しいモルトもイングリッシュフードも、
メニューの活字の上にしか存在しない。
そして客も店員も子供だらけで、酒場のマナーも存在しない。


それを誠に残念だと感じるのは、
私だけ、なんだろうか。

                              H

 
 
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