いつもと同じように走っているのに、運が悪くて取り締まりに遭う。
その日私は、首都高速を横浜駅東口から関内に向けて走っていた。
MMを横目で見ながら、路肩ギリギリを走る。
「ごめん、急いでいるんだ」
そう呟きながら、トラックの脇をすり抜ける。
トラックの前に出た途端、横風を喰らい直線なのにリーンさせられる。
桜木町のトンネルの入り口は、風が巻いているから要注意だ。
そのまま入ると、振られて併走する車にぶつかりかねない。
右にリーンする前にミラーを見ると、赤灯点けた白バイが追い上げて来る。
あ〜あ、ついてない・・・。
「何キロで走っているんだ?」
(何キロでメーター止めたか・・だろ)
「いやぁ、前見て走っていたので、スピードメーター見てないッス」
(どこにいたんだろう。トラックの影で見落としたか・・)
「ほら見てみろよ、このメーター」
(おやまあ、3ケタだよ)
「はあ、凄い数字ですねぇ」
「ここ何キロだか解っているのか?」
(高速なのに50キロ・・・これいかに)
「確か50キロ制限ですよねぇ」
「何でこんなに飛ばしていたんだ?
いつもこんな運転しているのか?」
(急いでいたに決まってるじゃないか)
「10時に客が来るので急いでいたんです。」
(やべ、もう5分前だ)
「免許証出して!」
(ゲッ、家に置いてきた。 昨日着てたジャケットの中だ)
「何? 家に忘れた?」
(嘘じゃないって・・、不携帯も追加か〜 最低・・・)
「何か身分証明するものは?」
(鞄には打ち合わせの資料しかないな〜。 名刺でも見せるか)
「急いでいるのはわかるけど、こうやって取り締まりに遭えば、
余計に遅れるだろう」
(その通り。 だからとっととキップ切って。
だけど、不携帯と解って、高速でこのバイク置いていけ、と言うのだろうか)
「いいから、行って」
(へ?)
「はい。 あの〜」
(一発免停の速度違反と免許不携帯でっせ。 ダンナ)
「気をつけるんだよ。」
(見逃してくれた・・・のかぁ こんな事初めてだ・・・)
これは実話。(随分前の事だから、もう時効でしょ:交通事犯は2年で時効)
私は確かに89キロオーバーで停められた。
いや、私のバイクが実際どんなスピードで走っていたかは解らない。
ただ、メーター見る余裕など無い状態で、走っていたのは事実なのだ。
エンジンは、ほぼ全開状態だったので、文句を言える筋合いではない。
こういう時、「運が悪い」と言いがちだ。
でも、しっかり周りを見ていれば、白バイの存在には気がつくはず。
自分が注意不足で見落とした事を忘れ、「運が悪い」の一言ですます。
それは単なる責任転嫁でしかない。(自分自身の責任について)
取り締まりに遭うのは運が悪かったのか、
見逃してもらえたのは運が良かったのか、
今となってはわからない。
見逃してもらった後に、注意力散漫のまま走行し事故に遭えば、
見逃してもらった事は、運が悪かった事にならないだろうか。
だいたいトラブルは、自分が気を抜いている時にやってくるもの。
大丈夫だろうと、無視している時に限って起こるもの。
だから、「運が悪かった」という言葉は、第3者が当事者に慰めに使う言葉。
無責任だからこそ言える言葉なのだろう。
それを当事者が使っていたら・・・・・
勿論、当事者が無責任なんですよ(笑)
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