|  昔、友達が「つまらない事があると道幅いっぱいのスラロームをするんだ」とよくホラを吹いていました。
 彼は、本牧の産業道路でそれをすると、言っていました。その道は、路側帯を含めると4車線に相当する幅広さで、トレーラーがガンガン走る
 恐い道でした。
 
 当時彼は原付免許しか持っていず、乗っているバイクも
 MR50というヤマハのバイクだったと記憶しています。
 小港に住んでいた彼は、家のすぐそばの酒屋でバイトをしていましたが、配達にはご存知スーパーカブ50が彼の足でした。
 プータローを決め込んでいた彼は、仲間内からきっと酒屋になるものと決めつけられ、彼自身も決まらない就職に半ば、匙を投げていました。
 
 自分の将来に対する不安と絶望が、彼をそういう行動に駆り立てたのでしょう。
 ある日本当に4車線の産業道路を、延々とスーパーカブで端から端までのスラロームで
 走行してしまったのです。
 トレーラーには怒鳴られ、車には急ブレーキをかけさせ、歩行者を呆れさせ・・・。
 そして、警察の御用となりました。警官に何故そんな危険な走行をしたのか、と問われて答えたのはそう、
 「人生がつまらなかったから・・」という一言だったのです。
 
 何故そんな事を思いだしたかと言えば、昨日の夜中の事でした。会社で非常にムシャクシャした事があり、どうにも我慢ができなくなって、
 バイクでひとっ走り・・と夜の巷に走り出したのです。
 
 一通り横浜界隈を走り回り、帰路につきました。
 本町通りから桜木町を抜け、横浜駅東口を越えて青木橋へと向かうコースは、
 桜木町ガード下から調子にのって開けて走ると、タイミング良く信号が全て青になる
 ちょっとしたトライアルコースと化するのです。
 
 久々にやっちゃうかな・・と、ガード下信号が青になった瞬間からアタックして、
 三車線をスラロームしながら走り抜けました。
 横浜駅東口先で工事をしていたので、青木橋まで青というわけにはいきませんでしたが、
 気分良く走り抜けられました。
 その時、「俺もアイツと同じ事してたか・・・」と思いだし、思わず笑ってしまいました。
 スピードとすり抜けと滑るタイヤとエンジン音と・・・。その全てが、へたっていた心をつま先立ちにさせて、
 自分は自分だという自信を思い出させてくれました。
 
 やり方はよくない事。
 確信犯だという事も認識しています。
 日々忙しくて乗っていない事が、こういう状態を望ませるのなら、
 やっぱりなるべく乗るしか、ないんでしょうね。
 (でも、イカンなあ・・・)
                           by H |