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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

夏の夜に

GX400SP vs RD400。
それは、もう20年も前の事。

ハンドルを換えてもキップを切られる時代に、やっとメーカーがキャストホイールを
出したと、仲間内でも話題になったバイクがヤマハのSPシリーズでした。
 
私は、その頃月に1000キロ以上の距離をスズキのハスラーで走っていました。
丹沢の山の中では便利なハスラーも、そこまでの舗装路ではなんとなく頼りなく感じ、
ロードバイクに乗ってみたくなり、手にいれたのがGXでした。

結構仲間内でもねらっていた人間が多く、S君は先に買われた事にとても傷ついていました。
同じバイクだっていいじゃないか、と話しても、そこは他人と同じスタイルが許せないS君の事、
もうGXは眼中にはありません。
で、手に入れたのが黄色いタンクに黒いラインの入ったRD400でした。

当時の2サイクル車は持てるパワーを押し殺したセッティングで、人気は下降の一途をたどり、
RDも不人気車でしたが、数が少ないというところがS君の心にヒットしたようです。
 
4サイクルと2サイクルはどっちが早い?という話題になって、
かなり二人で走り比べをしてみたのですが、町中でのシグナルグランプリや、
西湘バイパスでの高速性能を比べてみても、殆ど差が出ないのです。
 
これは、仲間内でもちょっとした話題になりました。
皆、2サイクルの方が早いと思っていたのです。
 
S君としては「2サイクルの意味が無い・・・」と少しブルーになっていましたが、
2台でロードテストをしているうちに、妙に出来上がってしまったペアの高速運転に
はまってしまい、夜な夜な二人で走り回るように・・・・。
 
当時は、戸塚の友達の家(畑のど真ん中の一軒家だったので、若者の集合場所に最適)で
待ち合わせ、真鶴の岬を回ってまたそこへ戻るのに1時間以内?とか叫びながらの、
ペアナイトツーリングに明け暮れていました。
 
ある日、たまには夜の箱根に行こうという事になり、気持ちよく箱根湯本まで走った時、
一天にわかにかき曇りポツポツと雨が・・・。
 
シートにまでワックスを塗っちゃうくらい磨き込む二人でしたから、その場でターン。
「雨雲をぶっち切るぞ!」
と二人で叫んで西湘にのりました。
 
料金所でお金を払って後ろを見ると、ほんの500メーター位後ろでは雨が降っているのです。
こりゃ、マジで走んないと濡れる、と思いました。
二人とも、一張羅の革ジャンで、当然二人ともそれを濡らしたくないのです。
そこからは本当に濡れたくない一心での乱暴運転。

いつしか、戸塚の友達の家に辿り着いていました。
とにかく友達の家に上がらせてもらったら、ほんの5分もしないうちにサーっと雨が・・。
 
「マジ、雨雲ちぎっちゃったヨ!」

「危なかった〜、もう少しグズグズしてたら、ぐっしょりだったな」

たまたま、雨足が遅かっただけのこと。
でも、二人にとっては、ミラーに映る街路灯が雨でホワっと光るのを見ていたのです。

雨雲をぶっちぎった二人は、仲間内で思いっきり笑われてしまいました。
でも、二人にとっては何にも代え難い勲章だったのです。

S君は、トラックに巻き込まれて死にました。
私より運転が上手かった彼が、巡り合わせの悪さで事故に遭い、
手の施しようもなく逝ってしまった事は、今でも忘れる事ができません。

必ず右斜め後ろを走っていた彼が、今でも一人で飛ばしている時、
思い出の中と同じ位置に走っているように感じる事が、たまにあります。

そんな時は、努めてゆっくり走るようにします。

何故なら、
彼に言われているような気がするから、
なんですね。

「あんまり調子のって走ってると、危ないぞ」 と。

                              by H

 
 
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