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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 

寒い体験

暑くなってくると、必ず出てくる話題が「お化け」。
このネタをドラマ化する場合は、必ずお祓いをしてから・・・というのが、
ウチらの業界の通例となっています。
 
でも、お祓い自体が非科学的な事で、そういう意味ではまったく無駄な事なのですが、
何故かこれをやらないと、ロクな事が起きない、と言われています。
 
そもそもお化け騒ぎは、TV業界では多く存在していますが、
その過酷な労働状態から意識朦朧となったりする場合に、見えぬもの見たと感じて
しまうだけの事だと思っています。
しかし、明らかにそうでない状態にも出っくわす事もあったりするので、
それについてどう説明していいのか解らなくなったりします。
 
よくある「金縛り」は、疲れ過ぎている時は当たり前に起きる事で、
疲れた体が寝ているのに、頭が起きているだけの事。
 
無茶苦茶なスケジュールで平均睡眠時間が3時間を切るようになると、
たいがいこういった状態に陥る人が多いので、タレントが「金縛り」にあったと
言っても、「あそこの事務所はちゃんと寝かさない程スケジュール入れる」という
噂しか立ちません。 
 
見えない物を見る状態、つまり「お化け」を見る事は、
一瞬の睡眠をとっている状態での夢なんだろうと思っています。 
 
でも、こんな体験をした事があります。
 
朝4時。
今日は早めに仕事が終わったから、家に帰って一眠りしようとタクシーを呼びました。
 
会社のロビーにある長椅子に座って、その到着を待っていると、
ロビーの奥にある編集室からVTRを編集している音が聞こえてきます。
「遅くまで頑張ってんな〜。ちょっと声かけていくか・・」と、
編集室へ・・・・・。
 
よくある事なんです。
放送時刻に間に合わないから、夜通し編集している事なんて。
明け方のその時間は、どうしても眠くなるので、誰かが声かけてくれるだけでも、
気分が変わって眠気が飛んだりするのです。
だから、タクシーを待つ間に、そうやって声をかけるのは当たり前の動作。 
皆お互い様で、「頑張って」と一声かけてくれるものです。
 
編集室へたどり着くと、
さっきまでしていた、編集の音が聞こえません。
距離にして10mもないところですから、
編集している奴が席を外す事も考えられません。
第一編集途中で席を外す場合は、山のような素材テープや原稿が置いてあるはずだし、
少なくとも一々編集機の電源を落としたりもしないのです。 
 
しかし
その痕跡はおろか、電源さえ入っていない編集機が私を迎えてくれました。
 
「あっれ〜、おっかしいな〜」

疲れていたのでしょう、聞こえない物が聞こえたような気がしたのでしょう。
そう心に言い聞かせました。
編集室のドアを開けるまでは、テープを早送りするキュルキュルといった音や、
編集機の動作音であるガチャンといった大きな音が、
ちゃんと聞こえていたのにも関わらず。

気のせいだと、自分に言い聞かせ、ロビーに戻りました。
すると、また、キュルキュル・ガチャン・キュルキュル・ガチャンと、
編集している音がするのです。
今、ここには自分しか居ない事は、タクシーを待つためにロビーまで降りてきた時に、
トイレによって確認しているのです。
 
「早くきてくれよ〜」

祈りました。
誰も居ないのに、編集機をいじっている何かがいる。
今も、その音が聞こえている・・・。
 
もう確かめに行く勇気はありません。

玄関のガラスドアの向こうにタクシーが見えた時、
後ろを見ずに走りだしました。
 

幻覚や錯覚は、それがそうだと認識した後は起きないものだと思うのです。
では、明らかにずっとしていたあの音は、いったい何だったんでしょう。
 

こういう体験、結構あるんです、私。

                       by H

 
 
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