どこかで見た事がある・・・・
そう感じるのは、以前訪れたから・・ではない。
まして、デジャヴでもない。
どこか懐かしい風を感じる風景・・・
それが、16年ぶりに訪れたイギリスの印象だった。
「最近のイギリスの飯はケッコウ美味しいんだよ・・・」
「絶対、信じない!」
「いや、本当だよ。去年行ってきた時、そうだった」
「じゃぁ、今度行った時、確認してくるよ・・・」
そんな話を美容師としていた事を思い出す。
深夜だと言うのにオープンカフェで食事を楽しむ集団を見て、
イギリスの変化がなんとなく伝わってくる。
確か、深夜の営業はライセンスが無いとできないはずで、食べる物もかなり質素だった・・
と記憶しているのだが、テーブルには美味しそうなピッツァなどが並んでいる。
これは期待できるかも知れない・・・
前回訪れた時は、ひたすら田舎回りだった。
だから、深夜のロンドンを歩く事は初めてになる。
頑なに古い物を残そうとするスタイルは健在で、
夜目にも独特な風景は美しく、そしてどこか畏れをいだかせる。
横浜も昔はそうだった。
歴史を感じさせる風景が、例えば伊勢佐木町の裏や
本町あたりにはいっぱいあった。
なのに、最近の姿は情けない程中途半端に新しい。
古めかしいオフィスビルは取り壊され、
どんどんマンションになっていく。
オフィス街のど真ん中にマンションばかりが立ち
街として不完全でアンバランスな形が増長する。
それは、赤レンガ倉庫のリニューアルより、
もっともっと見苦しい
ロンドンの古い建物には、
その歴史的価値にしたがって
ランク付けがされている・・と聞く。
クラスによっては全く同じ素材、もしくは
5年後には同じ色になる素材を使わなくていけないとか。
そこまでいかなくても、外側をそっくり残す改築は多く
その結果、独特の雰囲気が保たれている・・と感じた。
深夜、パブも閉まっているような時間に、外人である私がカメラを片手にフラフラ歩いている。
どこの国でも、少なからず危険を感じる状態ではあるが、何故かこの街では恐さの欠片も感じられなかった。
これが、大人の国・・・・という事なのだろうか
イギリス文化を手本に開国した日本は、元々あった文化を一度切り捨てた。
しかし、どこかでそれは日本流にアレンジされ、「西洋風日本文化」として始まったと考えてよい。
古い物を大事にする感覚を持った日本人は、つい最近まで同じ感覚で生きてきたのだ。
そしてその形が、例えば建物等で残っていたのが横浜だったのだが、
それももう・・・過去の事としか言えなくなってきたようだ。
前に来た時は、横浜の風景に似ている・・・と感じて、違和感を感じなかった。
イギリスに似ている横浜を、誇りにも感じられた。
しかしそれは、思い違いだったらしい。
16年の月日は金満国家を醸成するために費やされ、
ただただ破壊と新造しかされなかった・・・という事らしい。
古さを残す意味は、この街を歩くとよく解る。
流れる空気と時間が違う事が、肌を通じてよく解る。
そして横浜が失ってしまった物の大きさも・・・
Text and Photo by H.Wakao
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