さぁ行くぞ〜という気分は、日常を追い抜く気分と共に、
睡眠不足な身体をどんどん覚醒してしまう。
結局、NEX3号の出発時間の直前まで、眠る事はできなかった。
しかたないさ、楽しくて仕方がないのだから。
寝過ごすよりマシ・・と、
とっとと起きて横浜駅に向かう。
電話が来ない
知っている人はいない
そんな環境がどれほど大切かを知っていても、
なんとなく動く気力が湧かないでいたのは、去年の今頃。
しかし、中秋月を見に出かけた時、
また出かける事を決めていた。
睡眠不足のおかげで機内で熟睡。
(でも機内食はしっかり起きて食べたが)
あっという間に辿り着いた香港で、まずはあの「麺」を喰いに行く。
細くて噛み切れない、だけど妙にクセになるあの「麺」は、
町中の至る所にある粥麺専門店で味わえる。
ホテルに荷物を投げたら、すぐ地下鉄に乗った
「麺喰うゾ〜、麺!」
思わず独り言。
単なるバカ(爆)
銅鑼湾駅で降りて外に出れば、人だらけ。
全員が大声で喋っているように五月蠅い。
コレだコレ!
この匂いと音が香港だぁ・・・・と人混みの中をスラローム
旨そうな匂いが充満するなか、
行った事のない店を物色する。
今回は、急に取ったチケットだから、
帰りは朝一の便。
それは最終日に何もできない事を意味する。
だから一食もおろそかにできないのだ。
中華風カレーも粥もいいのだが、
日本では絶対食えそうにないモノが最優先。
だから麺と亀ゼリーは外せない。
そして鴛鴦茶(コーヒー+紅茶)も・・・・。
潮州料理と書かれた店を数軒めぐり、
地元民がたくさん入っている店を探す。
(潮州料理店は旨い麺を出す店が多い)
混んでいる事は、美味しいかとても安いかの証明。
そのどちらかの理由で、絶対満足できるはず。
そして、希望通りの汚くて混んでいる庶民的な店を見つけた。
雲呑麺は当たり前すぎるので、叉焼麺をオーダーする。
噛み切れない麺を口いっぱい頬張って、
麺の量の半分に相当する位の叉焼を、
これでもかと食べまくった。
これが喰いたかった・・・とニヤつき、
10分もかからず完食。
食い終わった後に、次は何処で麺喰おうと無意識に考える。
バカだなぁ・・・と思いつつ、でも、コレが楽しみだったと気付く。
至福の時。
食い過ぎの予感。
見上げたら歩行者用の信号に変なステッカー。
町中年末セールの真っ最中だから、
きっとこれ以上引けない・・・と書いてあるのだろう・・と、勝手に想像する。
1/5位は漢字から意味が想像できる事。
それはこの国が好きになった理由の一つ。
バカ高いビルも、
バッタ物を売りさばく怪しい店も、
何だか見慣れてしまったおかげで、
新鮮には感じられない。
非日常へのエスケープは、
食べ物のみでは意味がない。
柄の悪そうな裏通りを選んで、
そこから伸びる狭い路地へ潜り込んでみる。
新しい風景に出会える事を期待して。
果たして、煌びやかな照明だらけの大通りの裏には、
真っ暗で人気の少ない道が、ちゃんとあった。
壁には、どこかで見たような落書き。
アメリカのチンピラがスプレーで書く、
英字をデザインしたあれだ。
ここは本当に香港なのか・・・・と
しばし佇む。
桜木町のガード下か、はたまた渋谷か、
待っているとチーマーが出てきそうだ。
こっちも充分に得体の知れない姿だからか
モードラ付きのF3を構えているからか
歩行者達は私の背後で
撮影が終わるまで待っている。
シャッターを押してふっと後ろを見たら、
10人ほど溜まっていて、こっちが驚いた(爆)
変わる事が進歩だったら、
変わらない事は歴史だろうか。
「未来は背中からやってきて、目の前には過去のみが見えている。」
とは、大将の言葉。
変わらない風景を見ていると気持は過去へ戻っていくから、
言い得て妙だと、感じてしまう。
その時々の色々な感情は、ある風景に出会った時、突然リアリティを持って蘇る。
そしてその感情に苛まれる事にもなる。
しかし・・・・
記憶があって、経験があって、傷跡があって、
生きている・・・と実感できる。
新しい道は、見えないからこそ面白い。
Text and Photo by H.Wakao
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