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                    「ドンナカンジ?」 
                     
                     
                    「マダシゴト ヘンジシナクテゴメン」 
                     
                     
                    「ソンナコトイイケド」 
                     
                     
                    「ソッチモシゴト?」 
                     
                     
                    「コンジョウヌケタカラノンデル」 
                     
                     
                    「マタ? 
                     ハヤクカエッテネタラ」 
                     
                    「ノマナイトネラレナイ」 
                     
                     
                    「ホドホドニ(^_^;)」 
                     
                     
                     
                    会話がこんな形になってしまう事、 
                    それは「無いよりマシ」と考える寂しさに誤魔化され、 
                    大事な事に目を背けている事実を忘れさせてくれる。 
                     
                      
                     
                     
                    「ほどほどに・・・か」と呟き、携帯をポケットにしまう。 
                     
                    ほどほどにできるのなら苦労はないんだよ・・・と、心の中で言い返す。 
                     
                     
                    自分以外に客の居ない店で、マスターが少し気落ちした顔を見せていた。 
                     
                     
                    「毎年、この時期になると入りきれないほど客が来て、 
                     今年もコレでいけるじゃん・・・って思うんですけどね。 
                     なんか、今年は人が少ないんですよ・・・」 
                     
                     
                    「俺って招き猫だから、そのうち客が来るよ。」 
                     
                     
                    「?」 
                     
                     
                    「空いてる店に入ると、 
                     30分から1時間の間に、客が来るんだよネ。 
                     静かでいいなぁ・・と思って入っても、 
                     いつの間にか客でいっぱいになってて、 
                     こんなはずじゃなかったって、必ず思うんだよ。」 
                     
                        (単に、他人と生活時間がズレているって事だとも思うが) 
                     
                     
                    「ああ、そういうお客さんって、確かにいらっしゃいますね。 
                     でもあんまり意識した事ないですね。」 
                     
                    「この間3時半に来たとき・・・ホラ、 
                     マスターがカウンターで居眠りしてた日さ・・・」 
                     
                     
                    「あの時は失礼しました・・・」 
                     
                     
                    「いや、そうじゃなくて、 
                     あんな時間でも4時に客が来たろ?」 
                     
                     
                    「そう言えば・・・」 
                     
                     
                    「一組、客を引っ張ったって思ったから帰ったんだぜ・・ 
                     で、あの客何時までいたの?」 
                     
                     
                    「いっやぁ・・なかなかの飲みっぷりで、店閉めたの9時でした」 
                     
                     
                    飲まずにはいられない・・・と言う人を多く知っていたが、 
                    自分がそんな言葉を吐くとは、思わなかった。 
                     
                    不景気な事は、年々下がる会社の売り上げが示しているが、 
                    それに従い、言いたくない事を多く言うチャンスも、増えてきた。 
                     
                    残業も休日も関係無い職位は、そのペイに見合わない程多くの苦悩を与えてくれる。 
                    寝ても覚めても夢の中でも仕事の事を考えてしまう日々が、ずっと続いている。 
                     
                    誰にも言えない事、 
                    解ってもらえそうにない苦痛、 
                    抱えきれない責任、 
                    苦し紛れのグチは聞く者を傷つけ、 
                    結局自分自身で答えを導かなくては・・・と自覚する事を、繰り返す。 
                     
                      
                     
                     
                    失業率がどんどん上がり、 
                    隣の男がホームから飛び降りた・・と友人の目撃談を聞き、 
                    クリスマスウィーク一週間前だというのに、閑散としているみなとみらいを歩くと、 
                    寒さばかりが心を凍てつかせているのではない・・・と感じる。 
                     
                    皆、自分の足元が揺らいでしまい、 
                    足を出す方向さえ見えなくなっているのだろう。 
                     
                     
                    簡単な事だよ・・・・。 
                    一度リセットすればいい・・・。 
                     
                    「どん底」に落ちる事は、辛い 
                    が、それ以上落ちないという安心感も、生んでくれる。 
                     
                    「命取られるわけじゃなし〜♪」 
                    と自分に言い聞かせれば、多少の貧乏も多大なる我慢も、 
                    全然大した事ではないと思えてくる。 
                     
                    だけど、 
                    杯を干し、今日の悩みを全部下ろす儀式が 
                    バー通いなら、 
                    今の私には必要な事。 
                     
                    こうやってアルコール依存症はできていくのかも知れないが、 
                    誰にも気兼ねなしの生きている私にとっては、 
                    唯一のストレス解消法になっている。 
                    (まだ酒を飲む余裕があるのだから、「どん底」には程遠いが) 
                     
                     
                     
                    昨日、ニュージーランドから結婚式の予告メールが届いた。 
                    12月27日にクック諸島で・・・と書いてあった。 
                     
                    長く付き合った二人がやっとゴールインし、 
                    新たなスタートラインに立つ。 
                    二人の笑顔を想像したら、少しだけ幸せな気分になれた。 
                     
                    そして 
                    明日への一歩を踏み出す気力は、 
                    酒には作れない事も知らされた。 
                     
                     
                     
                    おめでとう! 
                    FUKU&Danelle 
                    日本に来た時、お祝いしよう!! 
                     
                     
                       
                     
                     
                                         Text and Photo by H.Wakao  
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