「商売繁盛!家内安全!いよぉ〜」
威勢の良いかけ声と同時に手締めの音が響く。
11月18日「二の酉」。
正確には「酉待(とりまち)」と言う「酉の市」は金毘羅大鷲神社の例祭で、
11月の酉の日に行われている。
12日ごとに回ってくる酉の日が3回あると「三の酉」まである事になるが、
その年は火事が多いと言われている。
そして今年は、そんな年にあたっている。
商人や花街の人々から開運守護神として根強い信仰を集め、
一般的に「お酉さま」と呼ばれるこの祭りには、
大きな熊手の売店が並ぶ事でも有名だ。
お酉さまの熊手は「酉」が「取る」に通じ、
「取る熊手」という事で福運をかき集める縁起物とされている。
縁起物故、値段が付いていない熊手がずらっと並び、
職人っぽさを漂わせる客が、それを競って買い求める。
縁起を売るわけだから、売り手も売り物も派手だ。
ある大きさ以上の物を売った時は、店全員で手締めをしてくれる。
その元気な声を聞くと、今年ももうすぐ終わりだ・・と気づき、
来年も頑張って稼ぎ、またここへ来ようという気にさせられる。
かなり高価だろう大きな熊手を毎年求める人達は、
きっとそんな気持を、もっともっと強く持っているのだろう。
明治5年に金毘羅神社の末社として祭られたこの神社は、
当時は海のすぐ側だったせいか「鮨ネタ」を供養するための「すし塚」がある。
(昭和55年、神奈川鮨商環境衛生同業組合により建立:横浜市内ではここだけ)
鮨屋に熊手が多く置かれているのも、
そんな繋がりがあるのかも知れない。
一年ぶりの参拝だが、
今年一年どうにか商売になった事を感謝し、
来年の厳しい状況を無事乗り切れるように祈る。
しかし心は、
さっきから鼻腔を刺激し続ける露店の
食べ物に捕らわれていた。
狂牛病のせいか、牛肉を使った料理が見当たらず、
代わりにマヨネーズを生地に混ぜたマヨたこ焼きや、
焼き鳥等が多く売られていた。
どうやらそれらは、今年のトレンドらしい。
ニューカマーの中、目を引いたのは「横須賀風お好み焼き」。
カレー風味?と想像しながら覗くと、
おおきなベーコンがのっているものだった。
ネーミングに惹かれているウチは
マダマダ・・・と苦笑。
人混みの上に揺れる大きな熊手は、1年しっかり商売になった証。
誇らしげに掲げる人は、来年の大入りに願を掛ける。
縁起は金で買うものじゃないけど、
大きな熊手が置いてあるだけで安心できるのは事実。
だから、大きな熊手を買えるように頑張ればいいのかも知れない。
不景気を吹っ飛ばそうと集まるこの祭りは、
空気を味わうだけでも元気をくれるようだ。
Text and Photo by H.Wakao
三の酉は11月30日(金)
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