「・・・上々颱風でぇす。
台風があったり、雨があったり、
去年は一年で一番暑いという日にやっちゃって、
今年は・・・・・・・寒い。」
白崎映美の声が遊行寺(藤沢)の境内に響く。
今年もまた、「上々颱風パラダイス」が開催された。
去年より1ヶ月半冬に近づいたせいか、この日は気温が10℃以下。
吐く息が白くなるほど・・と言えば、その感じが伝わるだろうか。
しかし、オールスタンディングでヒートアップする会場は熱気に溢れ、
「小っちゃい事(寒さ)気にしない〜♪」と、観客も一緒に歌う。
CD「上々颱風9〜心の花〜」が出たばかりなので、
上々サウンドのニューカラーとしてその全曲がお披露目される。
バラードあり演歌ありと、バラエティに富んでいるのは相変わらず。
ロッド・スチュワートの「Sailing」(カバー曲)も、
上々カラーとなって再現された。
それを聴いていると懐かしい・・と思う反面、
今の流行曲の中には、いつもでも忘れられないメロディーが
殆ど無い・・と気付かされる。
「平和が戦車でやってくる」を紅龍が熱唱する。
去年出したCDに収録されていた曲だが、
その頃は旧ユーゴの紛争問題があった・・と思い出し、
一年経ってまた、
人間は新たな戦争を始めている事に気付いて、ゾッとした。
と同時に、
紛争の事なんてすっかり忘れている自分にも、驚いた。
初めて聴いた時は、タイミング合わせすぎ・・と感じなくもなかった曲が、
テロで荒んだ今の社会に、痛烈な批判を与えている・・・と感じられる。
その場で感じた寒気は、その日の気候によるものだけではなかった。
その後に演奏されたのが吉田拓郎の「どうしてこんなに悲しいんだろう」(カバー曲)だったが、
「自由」という言葉の意味をあらためて考えろ・・と言われているようで、
上々颱風の強さを再認識させられた。
自由って何だろう。
平和って何だろう。
一緒に楽しむって、大切だよね。
同じ場所に集い、共に楽しむ事。
その方法として音楽を使う上々颱風は、
その答えを聞き手に導いているように思えた。
Text and Photo by H.Wakao
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