散歩に良い季節には、本牧にある「三渓園」にでかける。
自然がめっきり少なくなってきた中区辺りにおいては、
森林公園とこの三渓園は貴重な場所だ。
貴重な古建築が多く移築され、一種独特の風景を作っているからか、
時の流れが変わってしまうようで、妙にホッとできるのが好きな理由だ。
重要文化財を除くそれらは貸し出しもされているが、
時代劇の撮影や茶会等に広く利用されている事を、知らない人も多い。
三渓翁の気分で茶会を楽しめるなんて、なかなかの贅沢だと思うのだが。
平成12年11月。
約1年前になるが、この三渓園に新たな顔が出現した。
その名は「鶴翔閣」
原三渓翁の住宅としてこの地に建てられ、明治の豪商の凄さを具現化した建物として
横浜市の有形文化財に指定されている。
この建物は、横浜の迎賓館としての位置づけもあるが、
懐石料理などを楽しめる、利用者にとっても間口の広い施設だ。
明治35年建造とされているが、
その頃の豪商の生活が、
そのスペースより想像できる。
廊下でさえこの広さだ。
芸術はお金がかかるもの。
だから芸術が伸びる国は、
それだけの余裕がある
という事なのかも知れない。
三渓翁は、
横山大観や下村観山等を
支えた事でも知られているが、
彼等が滞在した場所が、
こういった形でも利用できるのは、
ある意味、とても贅沢な事かも知れない。
不景気で明日をも望めぬ毎日に、
いつの間にかギスギスしてくる心がある。
ゆとりの無さ故、
自ら招いている感情だとしても、
そのザラついた感触を
忘れる事は難しい。
気の持ちようだ・・とわかっていても、
心豊かになるような感触を
持てるモノは少ないから、
私はついつい、
この庭園に来てしまうのかも知れない。
写真は正直なもので、
その日その時の感情が写ってしまう。
手ブレもピンボケも味だと知ってから、
尚更、その考えは確証に変わった。
最近の写真は、図らずも冷たい顔をしているものがある。
何故こんなに・・・と感じる時、
大概は何か問題を抱えている事に気付く。
写真は風情を切り取るモノでもあるから、
ソレを理解できない感情では、自分が納得できるモノは写らない。
何をするにしろ、余裕は必要だ。
そうわかっていても、許さない現実は追いかけてくる。
振り切る事でしか得られないのなら、アクセルを全開にする事も必要だ。
この一年前の写真は、いったい何を写しているのだろうか。
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今回紹介した三渓園「鶴翔閣」(楽室棟)にて、KENTAUROS LIVEが行われる。
荒井姿水さん(錦心流中谷派 襄水会 主宰)の薩摩琵琶と食事という会で、
時代を超えた調べを、明治の豪商の息吹の中で感じていただければ・・・と思う。
KENTAUROS LIVE
薩摩琵琶 演奏 荒井姿水
10月25日(木)
開場 18:30
演奏 19:00より
チケット ¥9,000
問い合わせ ケンタウロス 045-662-0304 (担当 金澤)
興味ある方は、上記へご一報を。
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「鶴翔閣」楽室棟内部
三渓園 開園時間 9:00〜17:00(入場は16:30まで)
問い合わせ 三渓園保勝会 045-621-0634
Text and Photo by H.Wakao
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