明け方というより夜中に近い時間、バイクに火を入れる。
それは、サマーパーティーのスタートには必ずついてくるものだと思っていたが、今年は違った。
警察や一般のバイク達と遭遇しにくい時間に思いっきり走り、辿り着いたら飲んで食うのが流儀だったが、
受付開始が午後3時で、イベントスタート午後4時という新しいスタイルが取られていた。
新世紀初のパーティーであるから、新しい試みもアリかな・・と思いつつ会場を見ると、
懐かしい顔や新しい顔に出会える。
場所は去年同様の富士の麓。
キャンプ場であるがため、車で家族共々参加、というスタイルも多かった。
もう30年以上も続いているクラブだから、2世ライダーなんて当たり前。
そろそろ3代でバイクに・・・というメンバーまでいるらしい。
それだけ続けば、親交が深いクラブも増えてくるようで、新旧取り混ぜたカラーを背負うライダーが目立った。
フーライボー、エンジェルダスト、サーティース、ケルベロス、ヘルダイバーなどの常連に加え、
昨年誕生したガネシャも参加。
ちょっとした看板見本ができそうなので、全部は撮影できなかったが、頑張って撮ってみた。
今年もここに来れた事は、一年間国替えを余儀なくされる事なく走れた証拠。
お互いそれを喜び、そしてその報告に歩き回る。
いつもどおりの大将の挨拶でイベントは始まり、ビールと料理が来場者を歓待する。
焼き肉がメインだった料理も、今年は豚の丸焼きが用意され、ちょっと派手だった。
日が高い事もあって、いつもよりたくさん飲む人が多いのか、語りの輪はあちこちで広がる。
ネットを通じて知り合った人にも出会え、あらためて情報の持つ力と意味を考えたりもした。
昭和30年代のケンタウロスは、鉄馬のみで距離を縮めてきたのだが、
その頃の情報は言葉としての力が主であったろう。
勿論、今もその強さが時として力を生むが、情報手段の多彩さと時間の短さで心が少しばかりすり切れる。
便利になればなるほど情報に振り回され、余計な摩擦が増えてはいないだろうか・・・と、感じる。
機械は、操作に対して当然忠実だ。
ある意味で、絶対裏切らない、とも言える。
しかしバイク乗りは、それを生き物のように感じる事が多い、と言う。
何故だろう。
それは自分の命を預けている・・・という部分に因るモノ、かもしれない。
信じなくては乗っていられない程、二輪車は危険な乗り物であるからだ。
その危険な乗り物が好きでたまらない者、危険を御する事が好きな者、
死を感じる事でしか生きている事を感じられない者・・・・。
バカをやればやった分だけ返ってくる、と知れば、命かけてまでバカをしなくなる。
生き残ったバイク乗り達は、自分のやり方をそれなりの代償を払って覚え、そして暗黙の了解を求める。
ここに集える人達は、そんな生き方をしているようにも、見えた。
昼過ぎに辿り着いてしまい、あらかじめ仕込んできたビールを浴び、
家族連れで参加するメンバー達を見ていて、こんな時間から始まるのも楽しいなぁ・・と感じた。
やがて薪に火が焚かれ、
キャンプ場らしい風景が演出される。
昼から全開で飲み続ける人達は、このまま酔いつぶれてしまうのだろう。
ベリーダンサーの踊りに合わせて舞いの輪に加わる者まで現れた。
バイクで遠くに出かけ、気の向いた所で野営をする。
それは、自由な時間を満喫するのにはもってこいの方法。
ここはキャンプ場だけに、そのための環境が整い、すこぶる快適だ。
ゆっくりオフを味わう。
そんな贅沢は、最近求めにくい。
夕方スタートも悪くない・・・と思う私の後に、ヒグラシの鳴き声が響いていた。
Text by H.Wakao
Photo by H.Wakao and K.H
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