ある晴れた日、仕事に嫌気がさして外へ出た。
中華街は相変わらず観光客で溢れかえり、気分転換どころかイライラを増長させられる始末。
なんでもないビルの入り口に中華風の狛犬を見つけ、しばし眺め入っていた。
手を怪我して以来、バイクに乗れない日々が過ぎる。
乗れない事はストレスとなり、天気が良いだけで腹がたったりもする。
だからだと思うが、道行くバイクは目で追い、路上に停めてあるバイクに目が行く。
そして自分勝手なインプレッションを呟いたり、乗り手の顔を想像してみたりする。
所謂、禁断症状のようなモノなのだろう。
仕事以外でストレスを感じたくないのに、こんなバイクを見つければ怒りさえ湧いてしまう。
持っているだけで満足できるって事は確かにある。
だが、乗ってもらえないバイクは可哀想だ。
ここまで酷くはないものの、私のバイクもシートをかぶったまま。
シートをかけてなければ、同じような状態にもなりかねない。
梅雨が明けたら、少しずつ乗ってみよう・・と心に決めながら、ショップへ出かける事にした。
撮影に使うから・・と、綺麗に化粧をされているXL1200が入っていた。
昔は、ハ-レーなんて、手の届かない高級車にしか見えなかったが、今や普通に買える一台と言えるようになった。
国産車に比べれば、その雑な造りはどうかとも思うが、現在の日本車には無い味があるように感じる。
デザインも排気音も・・・・。
オーバーデコレーションであったハーレーから、余計なパーツを外しまくって改造したのはHA達だった。
手を伸ばした所にグリップがくるように加工したハンドルは、最初は折り畳み机の脚だったと言う。
やがて、贅肉を落とし乗りやすく加工したバイクは、その人気の高さからメーカー自身がコピーするようになる。
日本において、族仕様のメーカーモデルが存在しないのは、乗りにくく格好悪いからに他ならない。
アメリカのアウトローバイカー達が乗っているようなチョッパーをカタログに載せても、
日本のアウトローバイカー向けのモデルは無い。
何故なら、どう見ても走りを楽しむような改造ではないからだ。
その事実を持ってしても、日本の族達はバイク好きとは言えないのかもしれない。
ちょっと見るとストレートに見えるバンスのエクゾーストは、
試しに聞いてみようとかけられたエンジンにより、会話不能の音量で側にいる者達の身体を揺さぶった。
しかし、その排気音を聞いていて感じる。
イライラするデスクワークに耐えかねていた私に、少しだけ気分転換をもたらす効果がある事を。
走っている時の感覚こそが大好きなのに、音だけでも気持をシフトできるもの。
それはやはり、バイクという名の、生き方の味付けが好きだという事の証明らしい。
なんだかほっとして、デスクへ戻る。
たった5分の意識のシフトは、想像以上に大きな落ち着きを与えてくれた。
やっぱり、バイクからは、まだまだ離れられないようだ。
Text and Photo by H.Wakao
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