休まず(休めず)に働く事に慣れると、気を抜く場所が必要になる。
それも、手軽にたどり着ける場所に。
食事をしながら酒を飲み、終電を気にせずに歩いて帰る。
そんな事でも、ちょっとは仕事漬けの感覚をシフトできるから、1時間余を歩いて帰る事も多い。
(途中で引っかかる場所のレポートはまた後日)
そんな事で昨日も、行きつけの店で少しだけモルトを嘗めて、本町通をてくてくと歩いていた。
開港記念会館は、ひときわ明るくライトアップされ、横浜らしい風景のパーツとして
今でも本町の顔として存在している。
何の気なしに交差点でその姿を眺めていると凄いスキール音がした。
海から関内方向へ向けたラインを右折する乗用車がブレーキを踏んだのだ。
本町通りは地下鉄の工事のおかげで、路面はパネルを敷いたような状態になっている。
普通の舗装に比べれば滑りやすく、バイクで走る場合は特にブレーキングがシビアで嫌いだ。
対向車も無い片側2車線の交差点を青信号で進入する場合、その広さからスピードが乗る事は想像できる。
右折を始めた車両の前に信号無視をした車両が道を塞げば・・・。
爆発音に近い衝突音とともにスピンする車両。
右折しようとした車両はAピラーより前はそっくり潰れ、エアバッグが膨れていた。
本町通りのど真ん中を塞ぐように停止した信号無視車両の運転手は、自分が起こした事故の意味が解っていないのか、
車両から出てくる気配はまったくなかった。
前の潰れた車両の運転手は、苦痛を露わにしながら携帯電話で会話をしている。
彼の安全を確認しようとそばまで近寄ったら、家族へ現状を報告している会話が聞こえた。
こんな時、人は真っ先に何処へ電話するのだろう・・・。
とにかく意識レベルは高いので、警察へ電話する事にした。
しかし、110番が応答する前に警察官が疾走してくるのが見えたので、運転席から出て来れない運転手を気遣う事にする。
事故を目の当たりにしたとき、何もしないで立ち去るのは簡単だ。
なまじ目撃者等に名前を連ねると、後で証言させられたりと面倒が起きる事も想像に難くない。
事実、4・5人の通りがかりは、何もせずに見物し、すぐその場を去った。
目の前で起きた事故を目撃した車両達も、当たり前のように事故車両を避けて行ってしまう。
幸い、双方に大した怪我もなかったようで、駆けつけた救急車は当事者の検査だけでその仕事を終えそうだ。
私ともう一人の目撃者のおかげで信号無視の事実も確認された。
確かに、他人が起こした事故に関わるのは、色々面倒だとは思う。
停まったところで、何ができるわけでもない。
でも、本当に何もできないのだろうか・・・。
事故を起こした後襲ってくるショック症状を知っていれば、少なくとも怪我人を精神的に楽させてあげられるかも知れない。
動かせない車両を避けて通ろうとする車両による二次災害だって、誘導する事で回避できるかも知れない。
自分が事故を起こした時、「お互い様だから・・・」との一言で助けてもらった事は何度もある。
だから走る時は、自分勝手ではいけないと、思う。
目撃者としての協力さえしない人が多いと警察官から聞き、怖さを感じて哀しくなった。
中華街から反町までの帰路は、そんな事を考えるのに丁度良い刺激と時間を与えてくれる。
今日は飲まずに帰ろうと思いながら遠くに目をやると、飲みにおいでと輝く街が見えた。
Text and Photo by H.Wakao |