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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 
 

The Far East


明治の時代から存在した元町は今、かなりのスピードで店舗の入れ替えが行われている。

老舗の力も元町ブランドも、その実力が通用してこそ生き残れる。
単に古くから営業している・・・というだけの歴史では、安売りを武器にする商売には歯が立たない。

元町から徒歩圏内に「ユニクロ」「ドンキホーテ」と安さを売りにした店舗が建ち、
商店街でも生き残りをかけた努力が為されているところへ、「GAP」が出店したのは昨年末。
横浜元町でしか買えないファッションがプライドだった店もある中で、
薄利多売路線の大型店舗がオープンする事。
それはある意味、伝統対資本主義の戦いにも見えてしまう。


返還されてアメリカ兵が居なくなった本牧は、
今のところ「日本の中のアメリカ」を引きずる街を演じている。

「アロファ・カフェ」はアメリカンのダイナーを模した店。
昔は、フェンスの向こうのアメリカを眺めながら、本格的なハンバーガーを食べるアメリカかぶれにピッタリの店だったが、
フェンスが無くなってからは本牧の持つイメージを頼りに、雰囲気だけで頑張っているように感じる。

その昔、本牧にあった伝説のディスコ「リンディ」で踊り倒し、空きっ腹を満たすために行くレストランは、
どこも怪しい感じのする敷居の高い店ばかりだった。
「ベニス」「VFW(当初、日本人お断りだった)」「ゴールデン・カップ」「リキシャ・ルーム」・・・
それらは、兎小屋を連ねる日本人小僧から見れば、日本の中のアメリカを立派に演出していた。


その当時、小港の交差点にある花屋は、深夜12時まで営業していた。
それは、女を落とす花を買いに来る奴が多かったから・・と誰かが言っていたけど、
PXが残っていた時代には当然の事だったろうと想像できる。

朝まで営業していた「リキシャ・ルーム」は、テーブルに座っても相手の顔がよく見えないほど暗い店で、
バーカウンターでは、ブルーのライトが客の目線の高さでバックバーに施されていた。
横に座る女の顔は見えても、バーテンダーの顔はお化けのようにしか見えない、
と言えばその雰囲気を伝えられるだろうか

窓は一切なく、ドアを開いても誰が居るかはすぐには見えない。
夜に慣れた目でもそう感じたのだから、その暗さは半端ではない。
恐怖と拒絶をぶつけられるようで、好きだった。

しかし、資本主義の競争原理がそうさせたのか
現在は深夜営業を止め、店内も顔が見える位に明るくなってしまった。

伝統や歴史が儲からなければ、変身しない限り生き残れないのだろう。


深夜11時の「リキシャ・ルーム」は、なんだかとても寂しい顔に見えた。



                              Text and Photo by H.Wakao

 
 
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