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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 
 

変わらぬ目で


夜、車で走っていた。
横には付き合っている女性が乗っている。
窓に映るのは、綺麗な夜景。
その中に横浜を代表するホテルの一つがあった。

「いいホテルだよなぁ・・・」

「どこがぁ・・」

「たまにゃ、あんな所に泊まるのもいいよね」

「大した事ないよ」

「へ?・・・ なんで? 」

「何度も泊まってるけど、狭いよ・・・」

「誰と行ったんだよ?」

問題はこの後の答え方だ。
さりげなく、現在の関係を転換するための布石か、それとも・・・・

「いっぱいいるからわからない・・・」

彼女は悪びれずに、そう言った。


若い頃は、自分と付き合っている人が、他の人との関係を喋る時、無性に腹がたった。
その時、確かに二人はステディな関係にあったとしても、説明のつかない嫉妬が膨らんだ。

「今、いるの?」

「ないねぇ・・最近は。」

「って、俺とつきあってからも、誰か摘み食いしてたの?」

「無いよ。 全然。 真面目でしょ?」

「当たり前なの! それが。」

どうふってみても、何となく言い逃れられてしまう。
何だか腑に落ちない。

「例えば、こんなラブホでもふらっと入ってみるとか?」

「あっ・・・ココ、意外に広くて綺麗だよ」

「誰と行ったんだよぉ・・・」

「いっぱいいたから、覚えてないよ(笑)」


何枚も、彼女の方が上手らしい。
ただ、今、そんな会話をしていても、
何故か昔ほど不快な気分にはならなくなっている。

ある程度色々な経験を積んで、お互い、今の自分がある。
それを理解して、大切にして、信頼しあえるのだから、
過去は別世界の出来事にしか映らない・・・。

昨日の君がどうであっても、今の君を好きな私には関係ない。




横浜にはけっこう、街角に彫刻が置いてある。
さりげなく目立たないように置いてあるものもあれば、ランドマークのように置かれているものも。
酔いどれて徘徊しているときそれらに会うのだが、中には気に入るものがある。

幾多のカップルが前を通り、待ち合わせをしただろうか。
観光地にいる彼女は、そんな風景を見続けている。

ずうっと同じ所にいて、道行く人達を見つめている立場は、
客観的な人生模様を眺めるのに良いだろう。

人を好きになるのは理屈じゃない。
お互いを信頼しあうのは、ある意味理屈でもある。

一瞬の間に、触れ合う心が生んだ関係は、
相手を知り、信頼し、お互いに楽しめる事を分け合いながら育っていく。

ものを言わぬ彼女達の目は、行き場が無くなってケンカしているカップルを、
優しい輝き見せながらを見つめていた。



                            Text and Photo by H.Wakao
 
 
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