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文化
クリスマスには何処に行こう。
豪華なディナーを味わうのもいいし、奮発してホテルで一泊というのもいい。
でも、そんな日だからそういうイベントを組むより、何か到達できた個人的分岐点で
自分を理解してくれる人と非日常を楽しむ方が、私は好きだ。
100年に一度のクリスマスだから・・と、無理矢理引っ張り出された仕切下手が街にあふれ、
交渉の余地さえない現実に固められて、身動きもできずに逆切れする姿がめだった今年も、
ヨコハマは観光地として綺麗なデコレーションを見せていた。
「横浜」と言えば真っ先に名のあがる山下公園辺りは、
その役目をみなとみらい地区に譲ってしまったらしい。
「山下公園」へ足を向けてみたら、想像以上に静かな雰囲気が流れていた。
貨物線専用の高架が無くなって、マリンタワーやニューグランドがそっくり見える。
特にニューグランドホテルの旧館は低い建物だから、全景が見えるなんて事はあり得なかった。
だからそれは、私にとって初めての風景に映った。
ただただ広いだけの、がらんとした広場に見えてしまうが、
クリスマスに浮かれるカップルから逃げるにはうってつけ。
久々に公園散歩を楽しんでみる。
変わらぬ姿を、眩い照明で飾り立て、2000の文字をつけた「氷川丸」。
幾多の航海を終えてモニュメント化した港町の象徴は、
時の移ろいを感じさせずにそこにいる。
クリスマスイブに、ニューグランド旧館のメインダイニングでディナーを食べるのは、
昭和30年代生まれとしては、夢のまた夢に感じられた事。
伝統あるレストランでは、とっておきの日には重要な顧客が優先的に席を押さえる。
社会的地位と顧客としての利用状況がその順位を決めるから、日々の努力がものを言うわけだ。
だからそれはステイタスとして成り立ったし、招待される側もありがたがったものだった。
しかし今や、そんな事をアドバンテージに感じてくれる人は少ない。
伝統に価値を見いださず、支払う金額に価値を感じる人が増えた。
情緒が無い〜と嘆くより、そういう文化なのだと理解すべきなのだろう。
今年も、巨大なキャンドルは灯った。不景気な気分を飛ばすにはもってこいのキャンドルだ。
年に3日だけの風景を切り取ろうと、多数のアマチュアカメラマンが群れていた。
カップルも家族連れも外国人観光客も群れる賑やかな汽車道で、
プレゼント交換をするカップルが多くいた。
贅沢な風景をバックに、ささやかなドラマを演じるとは、
なかなかしたたかで、微笑ましい。
ホテルに泊まってシャンパンを空け、
豪華なプレゼントを用意する時代は終わったという事なのだろう。
日本はまだまだ捨てたものじゃない。
不景気でもそれなりのクリスマスを楽しめるのなら、
楽しむ文化という物ができてきた、という事なのだから。
Text and Photo by H.Wakao
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Hisashi Wakao
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