あと何日したらアレが食べられる・・・と、疲れ切っている気持を慰めながら、
いつもは、指折り数えて待つ出発日。
しかし今年は
「明日フライト日だったよな・・・」
と悩むぐらい実感がなかった。
忙しすぎるから、物事を忘れる・・という事ではない。
処理しなくてはならない事が多すぎて、感情をわざと眠らせるようにしているのかも知れない。
だから、非日常へのキッカケすら、どこか他人事として自分の中で扱われてしまうのだろう。
離陸時のGを感じ飛び去る日常風景を横目で見ても、心は何だか起伏を見せてはくれない。
行かねばならない理由もあって、香港には年に2回は訪れている。
もう、10回以上は香港の地に立っている事になる。
それでも行くたびに驚かされるのは、その変化のスピードであり、人々のエネルギーだろう。
ニューヨークには敵わないものの、呆れかえるほどの数の高層建築がならび、
そのどれもが色々な意味でアトラクティブだ。
いつでも工事をしているのは、もう香港の風景の一部として感じられる。
どんな高層建築でも、足場が竹というのが中国らしい。
触ってみると随分固いその竹は、組みひもで器用に組み上げられ何十階の建物にも対応できるのだから、
恐るべし香港建築技術、思う。(爆)
住民にとっては工事がある事も生活の一部なのだろう。
工事現場の下では当たり前に飲食店が営業していたりする。
大きな店舗はあっという間にでき、儲けが出なければあっという間に撤退する。
だから、去年気に入った店を見つけたからと言って、今年そこにある確証はないのだ。
ワーナーブラザースのキャラクターショップでさえ、撤退してしまうのだから・・・。
香港島の「中環(セントラル)」はビジネス地区で、その山側には高所得者が住むエリアだ。
住民である高所得者達がそうしたのかは解らないが、その住宅地に向けて延々とエスカレーターが設置されている。
朝は下り、夜は上りに運行され、利用者は中流以上の生活をしている感じを匂わせている人が多い。
香港島は二階建ての市電が走る事で有名だ。
庶民的な地区とビジネス街地区があり、
観光客向けの店が多い九龍半島に比べて、地元民が圧倒的に多く歩いている。
つまりこれは、香港の普段着姿が見えるという事なのだ。
「ランカイフォン」と呼ばれる一角が、中環(セントラル)にある。
ここは香港の六本木と言われるエリアで、オシャレなポイントとしてガイドブックに紹介されている。、
しかしここは過去、ホワイト専用地区のような感じがあり、
何回も訪れている香港なのに、唯一夜、足を向けなかった所だった。
それでも今回足を向けたのは、中国への返還後占領国であるイギリス人が外国人となった今の、
ホワイトエリアをなれの果てを、見たかったからかも知れない。
25才以上でないと入れない大人向けクラブ「1997」は、香港返還の年を店名に掲げても、白人ばかりが目立つ店だった。
路上にはビール片手の白人が溢れ、明らかに不快な目を向ける。
ウォン・カーウェイ監督作品の「恋する惑星」で使われた事でも有名なホットドッグスタンド「ミッドナイト」も、
映画の中のように香港人が気楽に入れないような雰囲気で覆われていた。
横浜で米軍関係者から受けた排除感にも似た人種差別的視線は、今の香港の一面としてまだ存在しているらしい。
居心地の悪さに負け、「ミッドナイト」でハンバーガーとビールをオーダーできないまま退散したのは、言うまでもない。
それにしても香港は元気だ。
300円も出せば、横浜中華街では絶対食べられない程美味しい雲呑麺が、町中の粥麺屋で食べられる。
美味しい食事を堪能しているうちに、日常抱えていたやりきれない不満は消えてしまった。
夕食の後、香港島を眺めに海辺まで出てみれば、不景気とは言え十分にライトアップされたビル街が、
これぞ香港と言った夜景を彩っていた。
Text and Photo by H.Wakao
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