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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 
 

like blue murder


夏、旧盆が終わると、なんとなく秋の予感を感じるようになる。
それは、ほんの少しだけ日の長さが変わったり、朝晩が過ごしやすくなったりする事で感じるのだろう。
それでも朝日が昇るのはまだまだ早く、残暑もまだまだ厳しいのだが・・・。

ここのところ使っているフィルムが、ある特定の時間の光で不思議な色を発色する事に気がついた。
露光がアンダー気味の時、ブルーの発色が派手にでる。

朝、日が昇る少し前の、街が凍ったように静かで青い時間を、今回撮った写真は思い出させてくれた。
透き通って全体が青く見える時間に、人には言えないようなスピードで町中を飛ばす。
青を裏切る光は、信号の赤と他の車のブレーキランプ位の物。
それとて真っ青の世界には、単なるアクセントにしかならない。

不思議な事だが、フィルターもかけていないし加工の類もしていないのに、大好きな深いブルーが刻まれた。
プリントしたら暗いのに目を刺すような青が出ている。
気まぐれに撮ったその空は確かに青かったけど、こんな目を奪われるような色ではなかった・・・・。



片思いの彼女に、やっとの思いで告白をした彼が、あっさり振られて飲んだくれ、
付き合った仲間が潰れた頃にバイクで飛び出した。
3気筒の2サイクルエンジンが載った変なバイクは、夜と朝の狭間に白い煙だけを残して走り去っていく。

やっと静かになったと思って彼の方を向いたとき、主を失ったクッションと空瓶だけが視界を埋める。
仲間を叩き起こし、手分けをして探しに出た。

一途な奴だから、死ぬ気かもしれない・・・。
ヘルメットも被らずに飛び出している。
誰もが口には出さなかったが、言いようの無い不安に駆られていた。

三浦半島、江ノ島、箱根、そして彼女の家・・・。
携帯なんて無かった時代、連絡係りを一人残して、公衆電話で連絡を取り合いながら
行きそうな場所、突っ込みそうな所を探し回る。

西湘バイパスの国府津SAで電話を入れた時、連絡係りを残した戸塚の家に、彼が帰ってきたと告げられる。
無事だ・・・という事、帰ってきた・・・という事、
その事実が嬉しくて、皆で笑いながら彼の家に向かった。

それは明け方の少し前、
漆黒の空が群青に染まりだした頃、
道は青く光って見えた。


そう、その時の青に似てる。
こんな色だった。


彼は、不器用な生き方しかできない男で、負けず嫌いで一直線だった。
好きな女に振られても、どうにかして守ってやりたいと思い続けた。
そして彼は、国を守る職を選んだ。
それが、彼の精一杯の愛情の証だったのかも知れない。


明け方、家にから空を見たら、安堵して飲み直す時見たような朝日が、
大好きな青を日常に引き戻すかのように、赤く染め直していた。



                Text and Photo by H.Wakao
 
 
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