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スペシャルメニュー
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それは、実に魅惑的な響きだった。
横浜中華街は、下手なアミューズメントパークより人気がある。
昨日までのバカ混みではないにしろ、盆休みを利用して殺到する観光客はまだ多く、
馴染みの店にも入れない状況は続いている。
みなとみらいのよう人工的な街ではないが、食を中心にたっぷり異国情緒を楽しめる街。
食材も中国茶もお土産も揃っていて、ちょっと足を伸ばせば「元町」や「山下公園」にも行ける。
最近はJTAの宣伝もあって人気が出でたきたシェイクミルクティーもあるし、
中華まん等のジャンクフードも揃っている。
昼飯を食いに外へ出たら人だらけ。
人混みの中をイライラしながら歩くのも嫌、という事で空いている店を探したら、
スペシャルメニューと題して料理内容を書いたボードを出している店があった。
「焼豚」「海老卵焼き」「豚肉の唐揚げ」「炒飯」「豆腐と青菜のスープ」「杏仁豆腐」
とあって、2名以上で一人当たり千円と書いてある。
これって結構お得なセット?と一同色めき立った。
そして当然、行こう・・・という事になる。
その店の名は「大福林」
リーズナブルで材料はそれなりだが、そこそこ食わしてくれる店として記憶していた。
店はかなり混んでいて、5人で入った私達はどうにか6人がけのテーブルに陣取った。
座った席から見える壁には「麻婆豆腐+炒飯 800円」なんて書いてあるから、
何の心配もなく「スペシャルランチコース」をオーダーした。
(何たって1000円である。 中華街にしては高い食事である。)
まず出されたのはチャーシュー。
酢漬けの野菜の上に、一人当たり2枚のチャーシューが並ぶ。
おいおい、これだけかぁ・・・と皆不満げに皿をみた瞬間、海老が入った卵焼きが
どうみても2人前位の量で出される。
えぇ・・・と思う間もなく千切りキャベツの山の上に並べられた、唐揚げと言うより
竜田揚げに近い豚肉料理がドン。
ここで、なんだか悪い予感がしてきた。
テーブルの上の料理は、中華街のランチに慣れている我々にしては、明らかに量が少ないのだ。
湯気の上がる料理を前にして、本来なら一番最初に出てくるはずのスープを待つのだが、
これがちっとも出てこない。
しかたがないので、固いばかりの焼豚にカラシをつけてチビチビかじり、
ぼそぼそするので水を飲みながらスープと炒飯を待った。
そろそろ怒るか・・と目尻がつり上がりだした頃スープが出てきたが、ラーメン丼一個分。
5人でこれを分けたら、小茶碗一杯分しかスープ無いぞ・・・と思うより、
これで少しは食事らしくなると感じる方が先だった。
そして・・・・・。
チャーハンがちょっと大きめの平皿に載せられて出てきたが、どうみても二人分位の量。
小皿に無理矢理5等分して、ブーたれつつ食べる。
半分冷めかけているおかずと共に。
普通、ランチを頼むと、一人当たり一皿分のおかずとご飯とスープがついて、
高い所でも900円安い所だと500円代。
だからなんとなく、まだおかずがでるような気分になっていたのだが、
次と言うか最後に出てきたのが「杏仁豆腐」だった。
よ〜く解った。
これは、観光客が昼からビールを飲むためのセットだったのだ。
いつもより大幅に量が少ないのは、ビールで腹を膨らせて丁度良い量なのだ。
おかずを肴にビールを2・3本空けて、ちょっとだけ食べるご飯物として
餃子のタレをのせるような小皿に山盛り分の炒飯が出る。
つまりそういう物を、選んでしまった私達がバカだったのだ。
食った気がしないまま、「失敗した〜」「いい勉強になりました・・」と異口同音に不平だけを漏らす面々。
外へ出て、観光客の海に入った瞬間に悟った。
お盆用のバカな素人向け高い料理しか出さない店に入った事を。
世の中は、夏休みの真っ最中。
馴染みの店さえ、いつもより値段を上げたりする事があるのに(もっとも私達にはいつもどおりだが)
そんな当たり前の事にも気がつかないなんて・・・・・。
でも、一言だけ言いたい。
明らかに観光客とは違う風情(ネクタイ姿)で来る客が、
いくらタイミングだからといってもランチに向かないオーダーをした場合は、
「こっちの方が良い」と諭して欲しい。
だって、毎週のように来るかもしれない客じゃないか。
今日いつもより多く儲けるより、「二度と行かない」って思わせない方が得だと思うのだが。
今の気分は
「二度と行かない」(笑)
Photo by H
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