サイト内検索
AND OR
Photo Essay
Text Essay
Desktop Gallery
Guestbook
Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 
 

彼方


最近行かなくなったが、暑い時「避暑」と称してよく行った場所にあげられるのが、八ヶ岳。
呆れる程青い空と、目に眩しい緑が、ここかしこに溢れていて、おまけに下界に比べて涼しい事、この上ない。
一時ブームもあってか、観光客がどっと訪れていたのが「清里」だが、写真の場所はそこより麓の甲斐大泉。
清里のように、街の建物が妙なテーマパーク状態にはなっていない、素朴な場所として記憶している。

思い出せば、気に入った人を連れてきたり、友達と車やバイクを連ねてきたりと、毎年のように訪れていた。
「清泉寮」でお茶をして、「アフガン」でカレーを食べ、「八ヶ岳高原ヒュッテ」で宿泊し、佐久から軽井沢へ回ってと・・・
夏の避暑地巡りとしては、自分的には定番としているコースだった。
でも、ここ数年、意味なく訪れていないのは何故だろう。


色々な思い出が有りすぎて・・・と言えば聞こえがいいが、
俗っぽい衣を纏いすぎた風景や、危なささえ感じたワインディングを尽くストレートに作りかえてしまった事などもあって、
魅力を感じなくなってしまったのだと思う。

いやいや、それだけじゃない。
求める物が得られなくなったって事が、一番の理由なんだ。


20年前さえ、一泊2万を下らなかった「八ヶ岳高原ヒュッテ」では、信州の素材を使った料理が抜群だった。
一年に一回、ちょっと贅沢な旅行として宿泊した時、信州牛をメインにしたコースを食べたのだが、
ミディアムレアに焼いてもらった肉が口に入った途端、旨味だけを舌に残して溶けてしまったのを、今もしっかり覚えている。
その後何度も訪れたのだが行く度にクォリティが落ち、ついには高い料金を支払う意味を失った。

清泉寮は、ジャージーミルクを使ったソフトクリームが素晴らしかったが、観光客が殺到しソフトクリーム専門スタンドができたあたりから、
店も客もともに品の下落を余儀なくされ、その場の居心地が悪くなるにつれ足が向かなくなってしまった。

クリスマス・イブに「何処へも連れてってくれない・・」と睨んだ彼女を、朝一番に叩き起こして野辺山まで連れてきて、
昼にはその年の初スキーをしていた・・・なんて事もあったのだが・・・・。
(彼女は、既に誰かと結婚して一児の母。)


今の私が欲しいと思うのは、非日常性と安くて美味しい食事。
できる事なら、日本語があまり聞こえない環境がありがたい。
人里離れた自然の中でもいいし、外国でもいい。
仕事から完全に離れられれば、どこだって満足なのだから。


今でも八ヶ岳は、私にとっては非日常を感じられる、落ち着ける大事な場所。
胸一杯吸い込みたい綺麗な空気も、夜に見る吸い込まれそうな星も、
今も変わらずそこに存在している・・・と、信じている。


                Text and Photo by H.Wakao
 
 
サイト内の画像・テキスト等の無断利用・転載は禁じます。
Hisashi Wakao, a member of KENTAUROS all rights reserved. / Web design Shigeyuki Nakama
某若夢話は横浜飛天双○能を応援しています。