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Malt Crazy
道楽もほどほどに
日記的雑感
 
 
 

食い倒れ


子供の頃から好きな味・・・と考えると、ソースとケチャップの味が思い浮かぶ。
マヨラーなんて言うマヨネーズフリークもいるが、私の場合はやっぱりソース系。
それも甘めの豚カツソースの方が良いと思うから、甘党なのかも知れない。

思い出せば、ソース好きになった理由のひとつとして、「ソースせんべい」との出会いがあった。
それは薄焼き煎餅に甘酸っぱいソースを塗った駄菓子で、子供の味覚にヒットするものだった。
1枚5円で売られていたそれを求めて、紙芝居屋を追っかけた事は今も懐かしい思い出だが、
自宅で薄焼きセンベイに市販のソースを塗って真似したり・・と、そのソースの味を探求する事は、
当分の間の命題として長く心にひっかかってもいた。

ところがそれは、あっけない形で答えが出た。
ある時食べた広島風お好み焼きのソースが、探していた味にとても近かったのだ。
そこで、店の人にどこのソースかと尋ねると、「おたふくソース」という答え。
最近こそどこでも手に入るソレは、昔は広島県以外には殆ど流通していなかったのだ。
だから真似のしようもなく、余計に店の味に憧れるしかなかったわけだ(笑)

テキ屋が供する粉物(焼きそば、お好み焼き、たこ焼き)は、その普通では手に入らない系のソースを使い、
家庭で同じように作っても真似のできない味を売りにしている。
日本全国にネットワークがある彼らの事、独自の味を持つソースとの出会いはたくさんあるはず。
こっちの知らないブランドがさりげなく置いてあっても、手に入れる方法は知る由も無い。

そうなると、ソース探しより美味しい粉物が食べられれば良い、と考えるのが私流。
色々食べ歩く・・・・という事になっていく。

今回広島に行くにあたって、当然のように粉物フリーク魂が燃えてしまった。
本場の広島で食べるだけでは物足りる訳が無い・・・・という事で、大阪に立ち寄る事になる。


まずは難波の個室お好み焼き屋で、大阪風お好み焼きをいただいた。
自力で混ぜ、自分で鉄板で焼くスタイルは、横浜あたりでも当たり前に出会えるのだが、
違いは種に出汁が入っていることと、具の肉や海老の量が多い事位だろうか。
ウスターソースとお好みソースが置いてあったが、だから?と言う程度の味。
新たな味との出会いはなかった。

その後、たこ焼きと明石焼き、そして邪道だが関西主流の小さいパリパリとした餃子を、食べに行く事にする。

まずは、「たこ焼き+明石焼き」
さすがは明石のタコを使っているだけあって、歯切れのよい美味しいタコを充分味わう事ができた。
特に明石焼きは、出汁に長ネギとセリと生姜を入れ、卵の生地で焼かれたタコを味わうそのスタイルは、
関東で同じ名前で出される物とはひと味違った調和を見せていた。

その出汁が薄味のくせに美味しくて、食べ終わった後下品と思いつつ飲んでしまった(笑)。
それに比べるとたこ焼きの方はソースが主張しすぎで、タコは美味しいんだけどねぇ・・・と呟く事に・・・・。
それでも、座って食べられる専門店と、「大きさだけが自慢です」の屋台とでは随分違い、
それなりの満足感に浸りつつ餃子の店に突撃した。

それは、半径3センチにも満たない半月状の形をした餃子だった。
はっきり言って違う食べ物。
皮は薄くてパリパリはしているが、何できているか解らないような感じがする。
具も少なくて物足りないから、酢醤油とラー油の力で食べるしかない。
日頃、横浜中華街の北京料理店で食べているから尚更そう思うのだろうが、
皮の味が情けない・・というか感じられないのだ。
一人で3・4人分位は軽くいけるが、どこでも食べられる餃子の延長上にしかない物だと思った。
これなら、明石焼きをお代わりしておけば・・・・と思うが、後の祭り。
仕方なく広島に期待を繋げる事にした。


広島では、当然のように「おこのみ村」へ出かけた。
生地を薄く伸ばし、山ほどのキャベツを載せ、その上に具と、茹でた麺を載せ、裏返して焼く。
焼き上がった頃、卵を焼いてその上に載せ、ひっくり返して出来上がり。
鉄板の上で切り分けて、ハガシで食べる。

やっぱりソースが美味しい。
それ以外では、麺がちゃんと麺の味がして美味しい事と、生地がカリッとして存在感を主張している事だろうか。
横浜でも広島風と称するお好み焼きは多く存在するが、麺と生地の存在感を感じる事はなく、
渾然一体となったモダン焼きと区別がつかないような物が多い。
やっぱり、本場の物はちょっと違うって事かも知れない・・・と思いながら、
その後関東では珍しいビーフカツを食いに行った。
(関東でカツと言えば、豚でしょ。ヤッパリ。)

高温の油で45秒、あっという間に揚げられたカツは、固めの衣の中で牛肉がレア状態になっていた。
塩・胡椒された肉は、そのままで充分に美味しいが、レモンを振ったりマスタードをつけてもいける。
関西圏ならではの美味しい牛肉は、カツにしても生で食べるような文化を生むのかもしれない。

粉物を食べ歩くつもりが、最後は牛肉。
でも、美味しかった。


誰か、関東でも美味しいビーフカツを出す店、ご存知ありませんか?
ソースの味を楽しんでいたはずなのに、カツにソースをかけずに食いきってしまった私は、
すっかりビーフカツにやられています。



              Text and Photo by H.Wakao
              大阪にて   
 

 
 
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